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対談 本音で労働問題を語る!vol.2
前回号に引き続き、川口事務所の協力弁護士 寺崎時史氏と川口事務所所長 川口史敏との対談を掲載します。
熱く語られた内容をご堪能ください!
-過労死の企業責任と安全配慮基準-
   
川口 ところで、寺崎先生は、過労死や過労自殺の問題を扱ったことはありますか? 対談 本音で労働問題を語る!vol.2
寺崎 亡くなる事件まではないですが、過労によって精神異常をきたしたという相手方(会社側)から依頼を受けたことはあります。
川口 私も同じような案件を扱うことがありますが、会社としてはやはり労災認定させたくないというスタンスはありますか?
寺崎 あります.小さい会社であれば特にあります。自分の会社の労務管理が悪かったということに繋がりやすいですからね。労災は無過失責任の保険ですから、会社側に落ち度がなくても払われるものですが、やはりその仕事と発病との因果関係が問題になってきた時には、賠償責任に繋がりやすいということが あります。
ですので、会社側は、協力はするが労災認定されない方に持って行きたがりますよね。ただ、逆に会社が全面的に協力して労災の認定がおり、労動者の生活も安定すれば、会社との関係を悪くしたくないと、損害賠償請求をしないということもあります。つまり会社が誠意を尽くして労災認定に協力した場合、労災が出ると損害賠償の額が調整されますので、その上乗せ部分をどれだけ争う必要性があるのか、労災を受けた労働者にも判断していただくということはあります。
川口 会社側としては、労災はいいけれども民事賠償は困る、というのが本音ということでしょうね。
寺崎 それはありますね。また、労働者が労災を利用していると見られる事例があります。繁忙期に月間100時間残業させられた労働者が本採用されなかったため、病院に駆け込んで精神疾患をきたしたと診断してもらったというケースです。この場合、解雇を争うための手段として労災を使っている姿勢が見えるので、労働者全体側の立場からしてもおかしいのではないか、という判断になります。
川口 解雇を争うための手段というと、前回号でお話しました退職後の残業代不払い請求の問題も当てはまりますね。もちろん、残業代を払わないのは違法ですが、ただ在職中は何も言わないで、クビになりそうになってから和解金を高くしようとサービス残業を持ち出すということもありますからね。会社もやるべきことはしておかないと、という時代ですよね。
寺崎 コンプライアンス、法令遵守はしっかりしておかないといけませんね。サービスといっても強制労働、無賃労働ですから。
川口 その辺りの認識の低さはありますね。ただ、労働の成果が形になって見える仕事、1時間で10個製品を組立てるとかでしたらわかりやすいのですが、いわゆるホワイトカラーですと、1時間でどれだけの生産性を上げているか見えづらいですよね。また、キャリアアップのために自ら長時間働いて力をつけたいという労働者もいます。過労死・過労自殺・精神疾患の問題を考えると、会社がどこまで安全に対して配慮していたかを明確にしておかないといけない。その中で一番簡単なのが、残業をさせないということだと思いますが、会社側が労働時間を短くしろといっても労働lはその気がない、となると時間短縮以外の方法も考えていかないとならないのかなと思うのですが。
寺崎 健康診断の義務、産業医、大きな会社でしたらカウンセリングルームを作るというのもひとつの手段ですよね。今、うつ病が非常に蔓延しています。ただ、小さな会社ではどうするか。昔は、家族的な付き合いをして精神的なフォローもできていたのですが、最近これだけ経営状況も厳しくなると、昔のような家族的な取扱いが難しくなってきています.小さい会社なりの対応を考え直さないといけませんね。
川口 建設現場ですと何メートル以上の場所に上る場合は安全帯をしなければならないとか、いろいろ取り決めや基準が細かく決まっています。精神疾患等に対しては、安全配慮の基準としては、時間外労働を月何時間以上やらせてはダメですよ、とかいったことでしかないので、もう少し細かい基準を設ける時期にきているのかなとも感じています。
寺崎 精神疾患の場合は、仕事が原因なのかプライベートが原因なのか因果関係を明らかにするのが難しく、基準を一律に設けるのは難しいですよね。そうなると、労働者の声をいかに会社側が拾っていくかということになりますが、例えば残業が多くてきついといった時にすぐに人を補充できるかとなると、経営的に厳しい場合どうするか、難しい問題です。
川口 法律基準を単一に作るのが難しいというのがあるので、逆に会社側も何をやったらいいのかわからなくて困っています。単純に言うと、上司と部下が一緒に飲み行くということも大切だと思うのですがそういう機会も減ってきている。年に一回運動会を義務付けるとか社員旅行を義務付けるというのも、一つの案としていかがですか?

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