鈴木三郎助という名をご存知でしょうか?恐らくピンとこない方が多いかと存じます。しかし彼がこの世に送り出した商品を知らない人はいないでしょう。日本の十大発明の一つで今は世界中で使用されている「味の素」を発売したのがほかでもない鈴木三郎助であります。うま味という影も形もないものを、いかにして世に問い、普及させたのか。三郎助の人物像や工夫に富んだ販売戦略からその謎に迫りたいと思います。
1867年12月、三郎助は相模国三浦郡(現在の神奈川県三浦郡葉山町)に酒類・雑穀商を営む「滝屋」の長男として生まれましたが、8歳の時に父親を亡くし、以後は母ナカに厳しく育てられました。学校を出た後、食品問屋で住み込み小僧として働き、そこで申し分のない評価を得ましたが、21歳の時、突如暴走を始めてしまいます。一攫千金を求めて米相場に手を出し、親譲りの財産をほとんど注ぎ込んでしまいました。
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