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また前号のA社のように客観的な営業目標を基準にするのではなく、相対的な人事考課によっている場合には、相対評価が低い者は常に存在するのですから、単に相対評価が低いというだけでは、解雇事由に該当しないというべきでしょう。
さらに、Bさんの能力や適性に問題がある場合でも、いきなり解雇するのではなく、教育訓練や本人の能力に見合った配置をするなどの解雇回避の措置を尽くすことが必要です。
労働契約は、人的・継続的な契約関係ですから、両当事者間の信頼関係が重視され、信義則上、会社には解雇回避努力義務があると解されるからです。
Bさんは営業職ですが、長期雇用システムの下にあって勤務を続けていく正規従業員です。このような従業員については、裁判例は、解雇について厳格な判断を示しています。
これに対して、上級管理職もしくは即戦力としての能力を見込まれ中途採用された労働者の解雇について、解雇の有効性はその地位、待遇に要求される業務遂行がなされたか否かの観点からなされるべきであるとして、解雇の有効性を認めた判決例があります。
近時、規制緩和、競争社会、成果主義というキー・ワードの下、終身雇用と年功序列型給与体系という日本型雇用が崩れつつありますが、労働者に対してすべて成果主義によるのではなく、働く者が「ハイリスク・ハイリターンの給与」を求めるか、「安定した雇用と標準的給与」を求めるかで、労働契約関係を選択できるようにすべきだといえるでしょう。 |
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