適格退職年金とは?
適格退職年金(通称「適年」)とは、昭和37年に税制改正によって導入された企業年金で、生命保険会社や信託銀行の推進のもとに普及した退職金の外部積立方法のひとつです。
適年を導入する場合は、事業主が生命保険会社や信託銀行などと、会社が定めている退職年金規程に基づいて年金保険契約や年金信託契約などを締結し、その契約が税法で定める適格要件に該当していることについて国税庁の承認を得ることが必要でした。
この承認が得られて制度を導入すれば、企業が拠出する掛金の全額が損金算入できるという税制優遇措置を受けられるため、中小企業を中心に広く普及したのです。
適格退職年金の廃止とは?
その後バブルの崩壊を受け、適年の積立不足が問題になるとともに、受給権の保護に難点があるということから、平成14年4月1日以降、新企業年金としての確定給付企業年金法が施行され、その後適年の新たな契約はできなくなりました。またそれ以前に締結された適年は、平成24年3月31日をもって税制上は非適格となり、掛金の損金算入等の税制上の優遇措置は受けられなくなります。よって税制を考慮した場合、平成24年3月末までに税制上の優遇措置のある他の制度に移行するなどをしなければならなくなりました。
適格退職年金に関するよくある誤解とは?
特に中小企業の場合、適格退職年金の導入を生命保険会社が積極的に進めたのですが、その際十分な説明がなされていなかったり、社長の方も「掛金を全額損金算入できる!」というところにばかり関心が集まり、制度そのものを理解しないまま導入された場合も多く、いろいろな勘違い、問題や誤解もあるようです。
その1.生命保険会社から毎月保険料という名目で徴収されているため、単純に生命保険
会社の保険に加入しているが、適年には入っていないというような勘違い。
生命保険会社が関わっていますが、適格退職年金はあくまでも退職金の外部積立方法のひとつです。
その2.会社に「退職年金規程」が見当たらないという問題。
生命保険の加入手続きをしたときに、退職年金契約の作成や労働基準監督署への届出を
すべて生命保険会社に任せたため、会社に「退職年金規程」が見当たらないという事態が発生していることがあります。
その3.適格退職年金制度を解約すれば、退職金の問題も解決するという誤解。
これが最大の誤解と言えるでしょう。
適格退職年金は、会社が退職者に約束どおりに年金を支払うための資金準備方法に過ぎません。適格退職年金制度を解約しても、退職金規程が廃止されたわけではなく、当然会社は規程で約束した退職金の金額を退職する従業員に支払わなければなりません。
制度発足時に、適格退職年金契約を会社と生命保険会社等が結ぶにあたっては、退職年金規程を作成し労働基準監督署に届出をするという条件がありました。この規程で定められた退職年金の給付については、労働基準監督署に届出をすることによりそれが明確な労働債権となり、会社は退職者に対し退職年金規程に基づく退職年金の支払を約束したことになっているのです。
(菅原) |