- 労働災害(労災)とは、労働者が業務上負傷し、または疾病にかかったりして、障害や死亡という結果を惹起することです。負傷については、業務中に起こると、特段の事情がない限り、「業務起因性」(その仕事をしたことによって発生した災害)が認められます。
- これに対して、疾病は業務中に起こったとしても必ずしも「業務起因性」が認められるわけではありません。反対に、業務外の時間に発症したとしても、「業務起因性」が否定されるわけでもありません。
しかし、その疾病が労災と認定されれば、労災保険の適用がありますが、業務外の疾病となれば、健康保険法の適用になります。労災認定の有無によって、労働者・その遺族に対する給付に差が出てきます。ある仕事から類型的に発生しやすい疾病については、労働基準法施行規則第35条の別表第1の2に規定されています。しかし、心臓疾患のような病気については、いつどこで発症するか分からないので、その認定基準が問題となります。
- この点、最高裁は、平成12年7月17日、「過労死」事件について、「慢性の過労や過度のストレス」が基礎疾患を増悪させることがあること、業務の過重性については、業務の不規則性、拘束時間の長さ、精神的な緊張等の具体的就労態様による影響を評価し、それを平均的労働者を基準にして考えるという方向性を示しました。
(次号へ続く) |