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寺崎弁護士の法律の窓川口事務所 協力弁護士 寺崎時史氏

 ワンマン社長が従業員に対して午後10ころに電話を架けてきて「明日から来なくてい
い。」と解雇しました。従業員は、納得がいかなかったけれど、その場は抗議しませんでし
た。従業員は、会社を辞めるにしても会社のパソコンに個人的にアクセスしたインターネ
ットの情報が残っていましたので、それを消去しようと思いました。しかし、感情的な社
長と昼間の時間に会社に行って会うのも嫌だったので、深夜午前3時ころに会社に行き、
パソコンを開いて個人的な情報を削除しました。その後、従業員が、深夜、会社に立ち入
ったことは、機械警備の記録から判明しました。
 社長が行った懲戒解雇理由もない即時解雇が不当解雇であり、法的に無効であることは
間違いないのですが、深夜に会社に立ち入った従業員の行為も常識的ではありません。
 昨今、個人情報保護法施行の関係で、会社のセキュリティが厳しくなっています。社長
は、従業員の立ち入りを住居侵入罪だと主張し、民事的には損害賠償を請求してきました。
 解雇が無効で従業員たる地位がまだあるとして、会社への深夜の立ち入りはどのように
考えるべきでしょうか。
 会社は、事業場施設の管理支配権があります。従業員の日常業務のための入場には、会
社の包括的同意があると考えられます。しかし、業務と関係ない理由での入場(例えば、
飲酒後、会社に泊まるための入場)については、会社が従業員らの慣例を大目に見ていた
という事情があれば別ですが、形式的には違法な立ち入りと言えなくもありません。
 しかし、入場する目的が違法なものではなく、態様も通常の出入りであり、結果的にも
管理状況を侵害したとまではいえない場合には、実質的違法性を欠くといえるでしょう。
 また法は、相対的なものであり、住居侵入罪にならない(刑法上違法ではない)とか損
害賠償請求を求めるだけの違法性や損害がないとしても、使用者が当該従業員を譴責、戒
告等の懲戒処分にすることが労働法上容認されるという意味では、深夜の立ち入りが企業
秩序違反行為であることになります。



御木本真珠店 話を戻して、上京後、横浜で真珠の売買を見学したことをきっかけに、故郷伊勢志摩の特産物である真珠の美しさに関心を寄せていきました。天然真珠の産出量は少ないため、真珠貝の養殖事業に着手するのです。試行錯誤や失敗の連続ののち、明治26年には相島(=現ミキモト真珠島)で半円真珠の養殖に成功、すぐに養殖場を開設し、同29年には特許権を取得。ただし天然真珠と同質の真円真珠の養殖実現にはさらに10年の月日がかかりました。
 明治32年には東京・銀座に「御木本真珠店」を開設、当時の来店客は過半数が外国人の方々でした。
 外国人との興味深いエピソードがあります。昭和2年にアメリカでエジソンと面会した際に、本来は口外しないはずである養殖真珠のすべての種明かしをしたところ、この特別扱いにエジソンは大変感動したそうです。また同年、鉄鋼王のジャッジ・ケリーとの晩餐の際には、アメリカいち柔らかい肉がでてくると



「肉よりもナイフの切れ味が素晴らしい」と褒めたたえ、鉄鋼王をも魅了してしまうのでした。また日本人では、伊藤博文との面会を取り付ける為、首相の身辺を世話する女中に10円を渡し、見事面会にこぎつけるというエピソードもあります。
 このように処世術に長け、誰をもすぐに「御木本びいき」にしてしまう才能こそが、ミキモトをここまで発展させた理由とも言えるでしょう。
 「ミキモト」の繊細なイメージからは想像もつかないような豪快な人生。96歳でその生涯を閉じるときにも、痛みを忘れるために「耳輪はイヤリング、指輪はリング、首輪はネックレス」と独り言を言っていたそうです。日本で初めての真珠養殖を成功させるためには、目標に向かってまっすぐ進む「行動力」と一生を真珠に注ぐ「執念」がないとここまでの成功はありえないのでしょう。私の中で「ミキモト」の魅力が一層深まったことは言うまでもありません。


<<参考文献他>>  「ぜいたく列伝」学陽書房  「図鑑・明治の群像296」学習研究社
               鳥羽市HP  株式会社ミキモトHP


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