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A社の就業規則には、「業務能力が著しく劣り、会社が就業に適さないと判断したときには会社は、当該従業員を解雇できる」との規定があります。
神奈川エリアの販売を担当する営業職のBさんは、会社の立てた売上目標の89パーセントしか達成できませんでした。会計年度末を迎えてBさんは¥上司から退職を勧奨されています。上司は、Bさんが退職勧奨に応じなければ、解雇もあるとの口吻です。
まず第1に考えることは、Bさんの成績が就業規則のいう「著しい能力欠如」という要件に該当するかです。
会社の立てた売上目標に達成しなかったというだけでは、「著しい」能力欠如とはいえません。会社は、常に販売拡張を求めますので、アグレッシブな目標が従業員に与えられることが多いからです。また、目標に達しなかった要因は、従業員個人の能力だけではありません。商品の品質及び価格競争力、商品の特性とそれに対する地域性、競合商品・競合会社の存在、市場の飽和性、需要に対する当該会社の供給力などの要因もあります。
仮に、A社が営業努力以外の要因も考慮した上で設定した目標値に達しなかったとしても、想定外の要因(例えば、商品が季節商品性の高い物で異常気象が続いた)もあります。約90パーセント目標を達成していれば会社に赤字を与えたとまではいえないでしょう。従って、Bさんを解雇することはできないと考えられます。会社は退職勧奨によって、Bさんを自己都合退職にしたいと考えているのです。
<次号に続く>
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