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平成18年7月1日
第22号
再雇用者の賃金を考える〜60歳以後の賃金設計のポイント 年金・雇用保険からの給付・賃金のベストバランスを探る

再雇用者の賃金設計を考える上で、60歳以後の雇用を支援
する公的制度である「在職老齢年金」(年金)と「高齢者雇用
継続給付」(雇用保険からの給付)を活用することによって、賃金と
社会保険料の会社負担が少なくなり、従業員の手取り額が多くなる可能性
があります。
会社負担が少なく、従業員の手取り額が多くなるような60歳以後の賃金の目安は、
60歳到達時賃金(60歳の賃金)の61%程度です。この額よりも賃金が多いと、手取り額の
逆転現象が起こることもあるので注意が必要です。
この逆転現象は、60歳の賃金に対する60歳以後の賃金の割合が高ければ高いほど、雇用保険からの

給付の支給率が低くなり、一方在職老齢年金の支給停止額が多くなる(年金が減る)という制度のしくみから生じます。(●表1参照)
よって再雇用後の賃金を適正に設定することにより、会社にとっては賃金の削減、社会保険料・雇用保険料の会社負担の削減、従業員にとっては手取り額が増えるという効果が期待できるのです。


制度活用の注意点

この制度を活用する場合には次の点を注意することが必要です。
(1) 従業員への制度説明と同意
賃金が少なくなっても手取り額に変化はないまたは少ない方が手取り額は多いとは言っても、賃金は労働に対する報酬である以上、人によっては賃金額が下がることへの抵抗感がある場合があります。従業員のプライドに配慮する必要があります。
(2) 従業員の被る不利益
賃金が減ることにより社会保険の保険料が少なくなるということは、つまり将来的な年金額の増加分が減るということです。また万一のケガや病気のときに受け取ることができる労災保険・健康保険からの給付額が少なくなります。
(3) 手取り額がシミュレーション通りにならないケース
雇用保険からの給付は、残業代を含めた毎月の実際の総支給額を基準に支給されるため、毎月の賃金に変動がある場合、必ずしもシミュレーション通りにならない場合があります。


所定労働時間と公的給付の関係

 在職中に年金が減額されるのは、60歳以降に厚生年金保険に加入した場合です。つまり厚生年金に加入しない場合は年金は減額されることなく、全額支給されることになります。
 勤務時間または勤務日数が一般従業員の3/4未満の場合は厚生年金に加入できません。例えば一般従業員の1週間の所定労働時間が40時間、月平均労働日数が21日の場合では、週労働時間が30時間未満または月労働日数が15日以下であればこれに該当します。また週労働時間が20時間以上であれば、雇用保険には加入するので雇用保険からの給付を受けることができます。このように働く時間や日数を工夫することで、年金を満額受給しながら働くことも可能となります。(※表2参照)
 賃金は従業員の職務、能力、成果、会社の再雇用に対する考え方など様々な要素が反映され決定されるべきものですが、賃金設計のひとつの考え方として公的制度の有効活用を検討されることもおすすめします。

(菅原)

< 表1 > 【60歳到達時賃金:400,000円、年金額:(月額)10万円、扶養家族:1名、60歳到達時以前賞与なしの場合の
       シミュレーション】

  60 歳到達時 60 歳以後
賃 金 400,000 300,000 290,000 280,000 260,000 244,000 240,000
60 歳到達時に対する賃金の割合 100% 75% 72.50% 70% 65% 61% 60%
年 金   100,000 100,000 100,000 100,000 100,000 100,000
年金支給停止額 ▲60,000 ▲60,000 ▲55,236 ▲50,452 ▲44,400 ▲44,400
高年齢雇用継続給付 0 6,525 13,076 26,130 36,600 36,000
400,000 340,000 336,525 337,840 335,678 336,200 331,600
所得税 15,340 9,420 8,860 8,290 7,350 6,430 6,180
社会保険料 48,622 35,577 35,577 33,205 30,833 28,462 28,462
雇用保険料 3,200 2,400 2,320 2,240 2,080 1,952 1,920
控除額 ▲67,162 ▲47,397 ▲46,757 ▲43,735 ▲40,263 ▲36,844 ▲36,562
総手取額 332,838 292,603 289,768 294,105 295,415 299,356 295,038
1週の所定労働時間 20時間未満 20時間以上 30時間未満 30時間以上
厚生年金への加入 なし なし あり
雇用保険への加入 なし あり あり
従業員の受給する公的給付 ・老齢厚生年金(満額) ・老齢厚生年金(満額)
・高年齢雇用継続給付
・在職老齢年金
・高年齢雇用継続給付

【用語の説明】
・在職老齢年金(年金)
 現在60歳から年金の一部(老齢厚生年金報酬比例部分)が支給されるため、高齢者は働きながら年金を受け取ることができます。しかし賃金の額に応じて、受け取れる年金額が減額されます。この減額されて支給される年金のことを在職老齢年金といいます。
・高年齢雇用継続給付(雇用保険からの給付)
 60歳以上65歳未満の雇用保険被保険者(被保険者期間5年以上が条件)で賃金が60歳の時点(60歳到達時賃金)に比べて75%未満に下がった場合に、その低下率に応じて60歳以降の賃金の最大で15%相当額が国から従業員に支給されます。


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