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小さな同族会社の運送会社(A社)で、これまで社長甲の片腕として働いてきた組合の委員長乙に対して社長が「会社の役員になってくれなければ会社を解散する」という提案をしてきました。組合の委員長乙は、どう対応したらいいでしょうか。
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まず、会社の株主たる経営者には「事業廃業の自由」があります。経営者が解散決議(株主総会の特別決議)をした場合には、清算手続を経て、会社の法人格は消滅します。したがって、労働者との雇用契約もすべて終了することになります。 |
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社長の目的は何だったのでしょうか。
組合の委員長を取締役にしようというのですから、「偽装解散による労働組合つぶし」ではなさそうです。また社長に委員長を組合から脱退させることによって「組合を弱体化させる意図」があったとしても、だからといって役員にするという方法は、委員長を解雇する方法に比べて、組合の経営陣に対して与える影響の点から考えると異例です。 |
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委員長乙がA社の事情をいろいろ調べていくと、次のことが分かってきました。
まず、会社は黒字だが、排ガス規制のため、金融機関から新たに融資を得て新しいトラックを数台購入する必要があったこと、これまでは社長が個人的に会社の連帯保証をしていたこと、A社は別のB社から借地をして自社ビルを建てていたが、そのB社は社長の息子が実権を握っていたことなどでした。 |
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結局、社長は、従業員である乙に会社の連帯保証をさせて、会社の借入をスムーズにする目的があったようです。これに対して、乙は、A社の株式を役員報酬としてストックオプションとして付与することを提案して対抗することにしました。 |
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