退職金制度を新しく作ったり、見直しをする場合のステップを教えてください。
まず退職金制度への想い(意義)を考え、次に規程・水準を考え、最後に退職金の積立方法・積立場所を考えるというステップに分けて考えることをおすすめします。
1.退職金制度への想い → 2.退職金規程・水準 → 3.退職金積立方法・積立場所
退職金制度への想いを考えるとはどういうことですか?
退職金に関しては「退職金制度を作りたいのですが中退共・確定拠出・確定給付のどれがいいのでしょうか」「適格退職年金を廃止するにあたってはどこに移行したらよいのでしょうか」というように、はじめに退職金の積立方法・積立場所に関するお問い合わせを受けることが多いのです。
しかし、前号でもお話ししましたが、そもそも退職金制度は会社に法的に義務付けられているものではありません。退職金の積立方法・積立場所を考える前に、まず法的には義務のない退職金制度を自社ではなぜ設けるのか、もしくは維持しようとしているのかを検討することが必要です。退職金の積立方法・積立場所を先に考えて、規程・水準をそれに合せていくのであれば、何のために恩恵的なものである退職金制度を設けたり、維持していくのかわからなくなってしまいます。「どういう想いで退職金制度を設けるのか」、見直しを検討するのであれば「どういう想いで退職金制度を維持し、今後はどうしたいのか」をぜひ最初に考えてください。
退職金制度への想いの代表的な説を教えてください。
退職金制度への想いは会社によっていろいろあると思いますが、代表的な説をまとめると次の通りです。
説 |
概 要 |
ポイント |
功労報奨説 |
従業員の会社への功績に対する報奨のためのもの |
自己都合退職の場合の減額・懲戒解雇者への不支給等会社が裁量をもてる規定にする |
生活保障説 |
老後の生活の安定を図るためのもの |
60 歳以降に受け取れる制度にする |
賃金後払い説 |
その都度支払われるべき賃金が蓄積されて退職時にまとめて支給されるもの |
賃金という認識のため、前払いとして給与に上乗せする方法も検討できる |
労務管理説 |
従業員の採用対策・定着対策・長期勤務促進のためのもの |
長く勤めるほど有利となる制度にする |
手切れ金・独立資金 |
円満な退職や独立を促すもの |
即金で払え、手が切れる・独立できる金額や方法にする |
例えば「退職した時に一時金で支払われなければ退職金をもらったというありがたみがないだろう」ということであれば受取りが60歳以降になる確定拠出年金(日本版401k)等を導入するべきではないし、「従業員の老後の安心を考えたい」ということであれば確定拠出年金(日本版401k)等を検討すべきなのです。「老後の安心も考えたいし、退職時にも慰労の気持ちを伝えたい」ということであれば確定拠出年金(日本版401k)等と退職一時金制度を組み合わせることを考える必要もあるでしょう。
このようにまず退職金制度への想いを検討してみることで、方向性や問題点がはっきり見えてくるのです。
(菅原) |