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労働審判制度が平成18年4月1日に施行されて1年が経ちました。労働審判制度は、個別労働関係に関する紛争を迅速、適正かつ実効的な解決を図ることを目的に制定された非訟事件手続です。この制度の特徴は、労働審判官(裁判官)と労働関係に関する専門的知識経験を有する労働審判員2名で組織する労働審判委員会が事件を審理し、原則として3回以内の期日において、調停による解決を試みつつ、調停ができない場合には、当事者間の権利関係を踏まえて事案の実情に即した解決をするために必要な審判を行うとされています。
労働審判手続は、3回以内の期日において、主として口頭による審理を行うため、争点が比較的単純な解雇事件、賃金等請求事件などに適しています。例えば、中小企業でどう見ても不当解雇であることは明らかであるが、労働者もそんな会社に戻るつもりはなく、一時金の支払いをしてもらえれば、労働者としての地位確認については、譲歩するつもりであるケースなどです。
これに対して、争点が複雑な事件、膨大または緻密な立証が要求される事件には労働審判制度は原則的に適していませんから、民事通常訴訟によるべきでしょう。例えば、整理解雇事件では、解雇の不当性を争うわけですし、労働者も職場復帰を望んでいるようなケースでは、調停による解決は困難との見通しが立ちますので、審判をしても一方当事者から異議申立をされると労働審判は失効し、訴訟へ移行します。従って、このようなケースでは、最初から通常訴訟による解決を目指すべきでしょう。
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