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前回述べましたように、組織的適応能力の有無が本採用拒否事由となるかについて、考え方の違いがあります。
試用期間中の解約権の行使に厳格な説(A説)は、試用期間中の法律関係を労働者の職業的能力や業務適格性の有無を判断するための一定期間試みに使用してみることと考えますので、組織的適応能力については基本的には解雇理由とはならないと考えます。
これに対して、解雇権の行使を緩和する説(B説)は、日本における雇傭の実態としては長期継続雇用に必要とされる対人的または組織適応能力も使用期間で試されてきたのであり、組織的適応能力の欠如は解雇理由となると考えます。
次に、中途採用の場合と新規学卒者の場合で本採用拒否の事由が異なるでしょうか。
試用期間を1.従業員としての適格性判定のための実験観察期間および2.従業員としての能力ないし技能の養成=見習期間と把握する考え方(C説)によれば、本件は中途採用の事案であり、新卒者の見習期間ではなく、より高度な適格性判断がなされることを認めることになり、本採用拒否=解約権行使が適法と判断されることになります。
これに対して、前記のA説によれば、本採用拒否の適法性の判断基準が複雑になるとして一元的基準によるべきで新卒者と同じ基準で判断すると考えます。そうすると、本採用拒否に客観的に合理的な理由があるか、社会通念上相当であると認められるか、という解雇権濫用法理が、試用期間である点で使用者の一定の裁量を許容しつつ、基本的には適用されることになります。
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