労働条件の最低基準を定めた労働基準法32条2項は、「1日について8時間を超えて、労働させてはならない。」としか規定していません。そこで、通常勤務で午前9時から午後6時まで働いたとすると、いつもより1時間の残業ですが、法定労働時間内(法内超勤)ですので、「労働基準法上は」、割増賃金の支払義務はありません。
労働基準法は、最低限度の労働条件を定めたものですから(1条)、この法律の定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については無効ですが(13条)、労働基準法の基準を超える労働契約は有効です。
就業規則で就業時間を9時5時と定め、労働協約で36協定を結んでいる場合、午後5時から6時までの1時間は、所定外労働ということで、「就業規則上は」残業と位置づけ、割増賃金としていることが多いです。もしこの会社がそのような定めをしているとすると、法内超勤も割増賃金を支払う義務があることになります。
本件のケースですが、仮に従業員が午後1時に出勤し、途中45分の休憩を入れて、午後9時45分まで仕事をしたとすると、労働基準法上は、法内の8時間勤務ですので、割増賃金は発生しないと考えられます。
しかし、所定労働時間は、9時から5時までですので、就業規則上は、午後5時以降9時45分までの実働時間については、「残業」として割増賃金の支払義務が発生します。
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