平成20年1月の日本マクドナルド東京地裁判決に端を発し、「名ばかり管理職問題」がクローズアップされています。本判決は、経営の都合による文字通り名ばかりの管理職は許されないという教訓を残し、いまや社会問題となっています。
管理監督者の判断は労働基準監督署も調査重点項目に置いており、弊社のお客様先でも、サービス業、小売業を中心に店長などの職務基準を明確化し、職責について本人とも共通の理解をしてもらうなどの見直しを始めています。
そもそも管理監督者とは、労働基準法第41条第2号における「監督若しくは管理の地位にある者」のことを言います。管理監督者には、労働時間、休憩および休日に関する規定は適用されないため、労基法上は時間外手当や休日割増の支払は不要とされています。というのは、管理監督者は事業経営の管理者的立場にある者又はこれと一体をなす者であり、労働時間、休憩及び休日に関する規定を超えて活動しなければならない企業経営上の必要があると認められるからです。 (ただし、深夜業、年次有給休暇の規定は適用されるため、午後10時から午前5時までの深夜時間帯に働いた場合は管理監督者であっても25%の深夜割増分に支払いは必要となりますし、年次有給休暇も与えなければなりません。) 多くの企業では一定以上の管理職(例えは課長以上等)を労基法上の管理監督者として取り扱い、残業代を支払いの対象外としています。しかしこの「労基法上の管理監督者」と企業における「管理職」とは必ずしも一致しない場合があり、管理監督者の範囲が問題となるのです。
管理監督者性の問題こうした状況を背景に9月9日、厚生労働省労働基準局長は「多店舗展開する小売業、飲食業等の店舗における管理監督者の範囲の適正化について(基発第0909001号)」(PDF)という通達を都道府県労働局長宛てに発信しました。
この通達の概要については、以下のとおりです。
1.採用
店舗に所属するアルバイト・パート等の採用(人選のみを行う場合も含む。)に関する責任と権限が実質的にない場合には、管理監督者性を否定する重要な要素となります。
2.解雇
店舗に所属するアルバイト・パート等の解雇に関する事項が職務内容に含まれておらず、実質的にもこれに関与しない場合には、管理監督者性を否定する重要な要素となります。
3.人事考課
人事考課(昇給、昇格、賞与等を決定するため労働者の業務遂行能力、業務成績等を評価)の制度がある企業において、その対象となっている部下の人事考課に関する事項が職務内容に含まれておらず、実質的にもこれに関与しない場合には、管理監督者性を否定する重要な要素となります。
4.労働時間の管理
店舗における勤務割表の作成又は所定時間外労働の命令を行う責任と権限が実質的にない場合には、管理監督者性を否定する重要な要素となります。
1.遅刻、早退等に関する取扱い
遅刻、早退等により減給の制裁、人事考課での負の評価など不利益な取扱いがされる場合には、管理監督者性を否定する重要な要素となります。
ただし、管理監督者であっても過重労働による健康障害防止や深夜業に対する割増賃金の支払の観点から労働時間の把握や管理が行われることから、これらの観点から労働時間の把握や管理を受けている場合については管理監督者性を否定する要素とはなりません。
2.労働時間に関する裁量
業務時間中は店舗に常駐しなければならない、あるいはアルバイト・パート等の人員が不足する場合にそれらの者の業務に自ら従事しなければならないなどにより長時間労働を余儀なくされている場合のように、実際には労働時間に関する裁量がほとんどないと認められる場合には、管理監督者性を否定する補強要素となります。
3.部下の勤務態様との相違
管理監督者としての職務も行うが、会社から配布されたマニュアルに従った業務に従事しているなど労働時間の規制を受ける部下と同様の勤務態様が労働時間の大半を占めている場合には、管理監督者性を否定する補強要素となります。
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