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「遅刻・早退が多く、取引先から出入り禁止を通告される社員に、態度を改めるように
注意し、部署替え等もしましたが、態度は改まりません。それどころか、『クビにす
るなら、して下さいよ。』と開き直る始末です。この社員に辞めてもらうにはどうすれば
いいでしょうか。」

9月号のケースを題材として考えてみましょう。当該社員は、遅刻・早退が多いことと派遣先での行状が悪く、会社の信用を毀損すると考えて、会社は、就業規則上の「勤務成績が著しく不良で、向上が認められないとき。」に該当するとして、解雇したものです。
解雇は、労働者にとっては、失業を意味しますので、解雇権の行使は、使用者の自由であっても、それが濫用されてはなりません。この点、裁判実務では、日本型長期雇用システムの中では、労働者の規律違反行為があっても、それが重大な程度に達しており、他に解雇回避手段がなく、かつ労働者側に宥恕すべき事情がほとんどない場合に解雇相当性を認めています。
遅刻が月に2、3回あったとしても、通常は、就業規則上の「けん責・戒告」や「減給処分」(但し、労働基準法91条の制限がある)で対応するのが、職務規律違反行為とペナルティとのバランス(相当性)が取れるというものでしょう。
また派遣先でのトラブルも一概に派遣社員に帰責事由があるとは限りません。派遣先の監督者と派遣労働者の職務遂行とは関係のない感情的なトラブルが原因ということも考えられます。派遣先は、法的には、業務執行のための指揮命令権限はあっても、労働者の解雇権限はありません。その代わり、派遣元が「出入り禁止」という自社の建物の管理権上の権限を行使して、事実上、派遣元の労働者に対する解雇に影響を及ぼすことがあります。
次回は、解雇無効の争いについて、お話しします。

短時間正社員

「短時間正社員制度」はフルタイム勤務(長時間労働)では不可能だったライフスタイルに応じた多様な働き方を実現させると共に、これまで育児や介護等、様々な制約によって就業の継続ができなかった人や就業の機会を得られなかった人の就業の継続を可能とし、就業の機会を与えることができる働き方です。 社員が定着しない、人材不足等で困っている企業では労働力人口が減少する中、優秀な人材の確保・有効活用を図る上で大きな効果が期待できます。

短時間正社員はフルタイム正社員より一週間の所定労働時間が短い正社員のことをいいますが、大きく2つに分類することが出来ます。

【タイプⅠ】フルタイム正社員が短時間・短日勤務を一定期間行う場合
【タイプⅡ】正社員の所定労働時間を恒常的に短くする場合

短時間労働の期間が限定されるタイプⅠは労働者が育児・介護、自己啓発などの必要性に応じて正社員のまま仕事を継続する、または正社員として雇用機会を得ることができます。
タイプⅡは「ワークライフバランス」の実現の手助けや健康面・体力面の考慮をすることができます。多様就業型ワークシェアリングの代表的制度として、その普及や定着が期待されています。

1.家庭の事情等で優秀な従業員が辞めてしまい定着しない
2.労働時間が長いために社員のモラルが低下し仕事の効率が良くない
3.豊富な経験のある高齢者の熟練した技術を若い労働者に継承したい
4.子育てや親の介護等、家庭生活のための時間が十分に確保できていない
5.長時間労働が続き体調が優れない
6.勉強や習い事など自己啓発の時間を確保したい

上記のような管理職や社員等の現場の声を調査し、ニーズを把握、また周囲がその働き方に理解を示してくれるような土台作りが必要となります。制度定着までの調査や土台作りに時間はかかるかもしれませんが、定着すれば企業にとって財産となる優秀な人材の育成・確保も可能となるのではないでしょうか。

(青木)


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