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機関紙 KAWA-RA版 労務管理や社会保険に関する話題の情報を、
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第107号 令和2年9月1日

伴弁護士の法律の窓

【テーマ】

 ウェブサイト上の誹謗中傷への対応

【相談内容】

インターネット上の匿名掲示板に、当社(A社)の悪評が書き込まれていたことが発覚しました。「A社は従業員にサービス残業を強要している」「A社は脱税紛いの経理処理が日常」「A社に就職すれば経歴に傷がついて転職もできない」などですが、いずれも事実無根です。(1)このような内容の書き込みを削除してもらう方法はありますか。また、(2)書き込みをした人物に対し、法的責任を追及することはできますか。

【アドバイス】

(1)書き込みを削除してもらう方法について

まずは、匿名掲示板が提供されているウェブサイト上に書き込みの削除依頼用の連絡フォーム等があれば、これに沿って、不適切な書き込みを削除してもらうようウェブサイトの管理者に依頼します。もっとも、削除をするかどうかはウェブサイトの管理者の判断次第となります。
上記の方法で削除されない場合は、ウェブサイトの管理者に対する書き込み削除の仮処分命令を発令してもらうよう、裁判所に申立てをすることになります。申立てが認められれば、裁判所がウェブサイトの管理者に対して、書き込みの削除を命じてくれます。裁判所の削除命令が出れば、ウェブサイトの管理者が書き込みの削除に応じる可能性は高くなります。

(2)書き込みを作成した人物に対する責任追及について

相談内容のようなA社を中傷する書き込みを行う行為は、A社の名誉を毀損する違法行為に該当する可能性が高いです。書き込みをした人物に対して、損害賠償金を請求したり、刑事処分を求めたりすることができる余地があります。A社の従業員であれば、懲戒処分の対象にもなり得るでしょう。
ただし、その前提として、掲示板に書き込みをした人物(発信者)が誰であるかを特定する必要があります。具体的には、まず発信者のIPアドレス等の情報を開示するようウェブサイトの管理者に求めます。IPアドレスが開示されたら、発信者が契約しているインターネットサービスプロバイダに対し、発信者の氏名、住所等の情報を開示してもらいます。
これらの発信者情報開示請求手続は、任意の開示請求のみで済むことはほとんど無く、仮処分申立てや訴訟提起など裁判上の手続を経ることが必要的といえます。加えて、仮処分を出してもらう際に裁判所から数十万円程度の担保金を納めるよう要請されることもあります。

(3)このように、現行法上は、会社の名誉の回復には予想以上の負担がかかってしまうことをご理解いただく必要があります。

また、そもそもインターネット上は誹謗中傷的な書き込みがあふれていますし、本件の書き込みも匿名のため影響力も限定的といえます。他方で、法的手続等のアクションを起こせば、その事実が新たにウェブサイト上で公表されてより一層注目を集めることとなり、かえって損害が拡大することにもなりかねません。
これらの点も踏まえて、慎重に対応を検討した方が良いでしょう。

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