【質問】
私は、小さな会社の経営者です。先日、同業で昔からお世話になっている会社の社長Aから、事業資金の融資を頼まれ、個人的に応じることとしました。
ただし、会社に貸し付けを行う際に、A本人を保証人とすることはもちろん、Aの息子Bにも保証人になってもらおうと思います。Bは公務員で、Aの会社の運営には全く関与していませんが、きちんと保証契約書にBのサインをもらっておけば、Bにも請求できますか?
【回答】
法改正後は、単にBからサインをもらうだけでは、Bに保証人としての責任を追及することができなくなります。
この度民法の一部が改正され、これまでは単に書面で保証契約を結んでいれば足りましたが、2020年4月1日以降は、保証人保護の観点から手続が厳格化します。具体的には、ご質問のケースのような事業用の貸金債務につき個人(取締役など会社と一定の関係にある者を除きます)を保証人とする場合に、
が必要になりました。
1.について、保証契約の締結前1ヶ月以内に、保証人になろうとする者の意思が公正証書の形で確認されていなければ、保証契約は無効となります。
2.について、保証人に対し、主債務者の財産及び収支の状況、他の債務の有無・金額・履行状況、他の担保の有無・内容といった返済能力に関する情報を提供すべき主債務者の義務が新設されました。主債務者が当該情報を提供しなかった場合や、事実と異なる情報を提供していた場合には、後日、保証人から保証契約が取り消されるリスクがあります。そのため、債権者としては、主債務者が保証人になろうとする者に情報提供義務を履行したことを証明できるよう、契約書等の体裁をきちんと整備しておくべきです。
本件では、Bとの保証契約の締結前1ヶ月以内に、保証意思を表明する内容の公正証書をBに作成してもらう必要があります。加えて、BがAから、主債務者たる会社の財産状況などの必要な情報の提供を受けた旨を確認する条項を、Bとの間で取り交わす保証契約書等に盛り込んでおくべきでしょう。
なお、主債務者による債務の履行状況や期限の利益喪失の有無について、債権者として情報を提供すべき義務が新設されておりますので、これらの点にも注意が必要となります。