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機関紙 KAWA-RA版 労務管理や社会保険に関する話題の情報を、
タイムリーにお届けする当事務所オリジナルの機関紙です。

第114号 令和3年11月1日

伴弁護士の法律の窓

【テーマ】

取締役の責任

【質問】

私はある中小企業の経営者ですが、友人が経営する会社の社外取締役になって欲しいと打診されました。自分の会社の経営で手一杯なので断ろうとしたところ、決して迷惑はかけないから名前だけ貸してくれれば良いと言われました。役員報酬を受け取らないようにすれば、名前だけの取締役になっても特に不利益が生じないでしょうか。

【回答】

無報酬かつ名前だけの取締役であっても、取締役に就任した以上は法的責任が発生するため、不利益が生じる可能性はあります。

【説明】

会社の取締役は、代表取締役の職務執行を監視する義務を負います。代表取締役が違法な職務執行をして会社に損害を与えた場合、代表取締役が責任を負うのは当然として、代表取締役の監視を怠った他の取締役も、会社に発生した損害を賠償する責任を負います。
そして、取締役が損害賠償責任を負う相手は、会社だけではなく第三者(会社の債権者など)に及ぶ場合があります(会社法429条)。例えば、代表取締役の放漫経営により倒産寸前まで財務状況が悪化した状態で、代金の支払見込みがないにもかかわらず会社が仕入れを行って倒産したような場合、仕入れ先は代金を回収できないという損害が発生します。仕入れ先(債権者)は、倒産した会社を訴えても代金の回収が期待できませんので、会社の取締役個人に対し、損害賠償責任を追及して債権の回収を図る余地があります。
会社法429条に基づく取締役個人の対第三者責任は、取締役が任務を怠ったことにつき「悪意又は重過失」があった場合に限定して発生します。この点、名目的・形式的な取締役に過ぎず無報酬であったという事情や、取締役が代表取締役から迷惑をかけないという約束を取り付けていたという事情があったとしても、これらは会社内部の一事情に過ぎず、第三者に対する「悪意又は重過失」が認定されてしまうリスクを完全に排除することはできません。
以上によれば、会社の取締役に名前を連ねる以上は、内部でどのような取り決めをしていたとしても取締役としての法的責任は免れず、下手をすれば個人資産を失って自己破産するおそれがあることに注意すべきでしょう。会社経営が正常に行われている限りは具体的な問題は生じず、責任の重さを実感することはないかもしれませんが、予想外に経営状態が悪化してしまった場合や、友人の会社が取引先との間で重大なトラブルを起こしてしまった場合などの有事の際は突如リスクが現実化します。それでも取締役に就任して良いのかどうか、慎重に検討した方が良いでしょう。

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