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機関紙 KAWA-RA版 労務管理や社会保険に関する話題の情報を、
タイムリーにお届けする当事務所オリジナルの機関紙です。

第118号 令和4年7月1日

伴弁護士の法律の窓

【テーマ】

労災が起きてしまった場合のリスクと労災保険

【質問】

当社は自動車部品の加工を業としております。当社の工場内には、使い方を誤れば怪我をしてしまうような機械もありますが、日頃から安全第一を徹底しているため、過去に労災事故を起こしたことはありません。もちろん労災保険にも加入しています。万が一、労災事故を起こしてしまった場合は、労災保険のみで対応可能と考えて良いでしょうか。

【回答】

強制加入の労災保険だけでは対応できない可能性があります。

【説明】

会社は従業員に対して、法律上当然に、労働者の生命、身体等について十分に配慮しなければなりません(労働契約法5条)。労災事故が発生してしまった際、安全配慮義務違反が認められてしまうと、会社は従業員が被った損害を賠償する責任を負います。
強制加入の労災保険は、会社が従業員に対して負担する損害賠償額のうち、一部しかカバーしていません。そのため、仮に労災事故の発生後に会社が速やかに労災保険給付のための手続を取ったとしても、それだけでは賠償義務を果たしたとは認められない場合があります。従業員が被った損害の程度によっては、労災保険からの給付だけでは全く足りないという事態も覚悟しなければなりません。
加えて、賠償金の支払いは、原則として即時一括払いが必要です。資金繰りの関係で速やかにまとまった金銭を用意できない、という懐事情があったとしても、被害に遭った従業員がそのような会社の都合を考慮してくれるとは限りません。
もし、従業員との間で話し合いによる解決ができず、裁判に発展した場合、裁判所から到底支払えない金額の一括払いを命じられてしまうおそれもあります。支払ができないと、得意先に対する売掛金債権や会社名義の預金口座等を差し押さえられてしまうリスクが生じます。会社の存続運営に重大な支障を及ぼす事態です。
労災事故発生による過大な損害賠償義務の負担に備えて、強制加入の労災保険で不足する分をカバーできる任意の賠償責任保険に加入する、という対策があります(自動車を運転する場合に、交通事故発生に備えて自賠責保険だけでなく任意保険に加入することと同じ発想です。)。現実に労災事故が発生したときに、強制加入の労災保険で不足する部分を任意保険で補う方法により、会社が支払うべき賠償金全額について保険対応での解決が期待できます。
もちろん労災事故が起きないように普段から従業員に対して配慮を尽くすことが最も重要ですが、万一の事故発生時にも十分に対応できるよう備えておくことにより、顧客や従業員を安心させることができ、企業イメージの維持向上にも役立つといえるでしょう。

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