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機関紙 KAWA-RA版 労務管理や社会保険に関する話題の情報を、
タイムリーにお届けする当事務所オリジナルの機関紙です。

第126号 令和5年11月1日

伴弁護士の法律の窓

【テーマ】

管理監督者

【質問】

当社は飲食店を数店舗経営しています。店長として雇用している従業員は管理監督者にあたるので、割増賃金を支払わなくても大丈夫でしょうか?

【回答】

雇用している従業員が、労働基準法上の管理監督者にあたる場合、時間労働や休日労働に対する割増賃金を支払う必要はありません。しかし、店長であることだけでは、管理監督者に該当するとは言えないので、管理監督者として扱ってよいかは慎重に判断するべきです。

【説明】

労働基準法法上、「監督若しくは管理の地位にある者」(管理監督者)は、労働時間、休憩、休日に関する規定が適用されず、使用者は時間外労働や休日労働に対する割増賃金を支払う義務がありません。
しかし、ここでいう管理監督者とは、単なる管理職とは異なり、「労働条件の決定、その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者であり、名称にとらわれず、実体に即して判断すべきもの」とされています(行政解釈)。単に役職の名前だけではなく、職務の具体的な内容、権限、勤務態様などが考慮されるのです。
そして、管理監督者といえるか否かは以下のような事情が考慮されます。

  1. 経営に関する決定に参画し、労務管理の重要事項に関与しているか?
  2. 出退勤時間など労働時間に対する裁量があるか?
  3. 地位と権限にふさわしい処遇を受けているか?

過去の裁判例において、管理監督者の範囲はとても限定的に解釈されており、企業側が管理監督者として扱っていた従業員に対し、割増賃金の支払いを命じたケースが多くあります。

たとえば、銀行の支店長代理について、部下の人事及び考課の仕事に関与していないこと、経営者と一体となって銀行経営を左右するような仕事に携わっていないこと、就業時間が決められていて出退勤の自由がないことなどを理由に、管理監督者であることが否定されています(静岡地裁昭和53年3月28日判決)。

また、ハンバーガーチェーン店の店長について、労働時間についての裁量がないこと、その店舗においては一定の権限はあるものの会社の経営方針の決定に関与していないこと、処遇が不十分であることなどから管理監督者であることが否定されています(東京地裁平成20年1月28日判決)。

さらに、ファミリーレストランの店長について、勤務時間が拘束され出退勤の自由がないこと、その店舗で採用する店員の労働条件を最終的に決める権限がなかったことなどから、管理監督者であることを否定しています(大阪地裁昭和61年7月30日判決)。

管理監督者として残業代を支払っていなかった従業員が、あとから管理監督者であることを争い、多額の残業代を請求する場合があります。従業員を管理監督者として扱ってよいかは慎重に判断する必要があります。

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