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機関紙 KAWA-RA版 労務管理や社会保険に関する話題の情報を、
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第134号 令和7年3月1日

伴弁護士の法律の窓

【テーマ】

経歴詐称

【質問】

特定分野での経験を見込んで採用したものの、実は未経験であることが後に発覚しました。もし未経験だと知っていれば採用なんてしなかったのですから、解雇をしても問題ないですよね?

【説明】

    1 質問者の事案は、経歴詐称を理由に懲戒解雇をすることができるか否かを問うものといえます。経歴詐称とは、労働者が使用者に対し、自らの経歴に係る虚偽の申告をし、または事実を秘匿することによって、使用者を誤解させ、雇用契約を締結させる行為をいいます。

    経歴については、使用者が必要かつ合理的な範囲内で申告を求めた場合には、労働者は信義則上の真実告知義務を使用者に対して負うとされています。なぜなら、雇用契約は、使用者と労働者の相互信頼関係を基礎とする継続的人間関係であるから、使用者が、採否の判定及び採用後の雇用条件、労務配置等の判断のために必要な事項として、労働者にその経歴の申告を求めることは当然の措置であり、雇用関係に入ろうとする労働者は、使用者から求められた以上は、信義則上、真実申告義務を有するものとされているからです(横浜地川崎支判昭50年21月10日(労判223号64頁)、東京地方裁判所昭和54年3月8日(労働判例320号43頁)等)。

    そのため、労働者による経歴詐称は、上記申告義務に反するものとして懲戒事由(場合によっては懲戒解雇)となり得るのです。

    もっとも、経歴詐称に該当すれば、直ちに懲戒事由が有効となるわけではなく、「重要な経歴の詐称」でなければならないとされています。何をもって「重要な経歴の詐称」に該当するかについては明確に定められてはいないものの、裁判例の多くは、「労働者が真実を申告した場合には、使用者が労働契約を締結しなかったと認められ、かつ、客観的にもそのように認めるのが相当であるかどうか」(名古屋高裁昭和54年12月23日(労判269号58頁))」によって判断すべきであるとされています。

    2 質問者のケースでは、特定分野での経験を積んだとする労働者の能力を評価の上、雇用契約後の労働条件、労務の配置計画を設定していた場合には、特定分野での経験がないことを事前に把握をしていれば、少なくとも同一労働条件での雇用契約を締結しなかったであろうと考えられ、かつ、客観的にもそのように認められる可能性はあり得ます。

    一方で、特定分野の経験の有無を問わずに同一労働条件での雇用契約を締結していたような場合や、質問者が展開する事業が労働者の経験の有無に左右されないような場合等、職歴が労働者の評価に影響がない場合には解雇が認められない可能性もあり得ます。

    このように「重要な経歴の詐称」と評価するためには、採用時の状況を含め、職歴が労働者の評価をするための重大な要素となっているかにつき、慎重に検討する必要があります。万一、「重要な経歴の詐称」に該当しないにもかかわらず一方的に解雇してしまうと、労働者側から不当解雇として訴えられる可能性もありますので注意が必要です。

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