新年にあたり、法律改正等によって今年、制度改革の検討が予定されている問題を取上げ、今後の雇用分野の経営課題について考えてみたいと思います。
そこで、今年、議論が活発化される問題として、以下の2つを取上げます。
検討されている内容
今でも、65歳までの再雇用制度は義務化されています。ただし、この再雇用制度は、再雇用するか否かの基準を労使協定で定めることが可能となっています。つまり、この基準を満たさない者は再雇用する必要はなかったのです。
しかし、今回検討されている再雇用制度の義務化は、この基準の撤廃を強制していいます。つまり、本人が希望すれば会社はその者を雇用しなければならない義務を負うのです。
企業の対応
今回強制される制度では、65歳までの雇用は義務化されますが、その時の労働条件についてはなんら規制がありません。そこで、労働条件は企業の側で、ある程度自由に設定することが可能となります。たとえば、月給制から時給制への変更。フルタイム勤務から短時間勤務への変更。週全日勤務から週数日勤務への変更などが可能となります。また、業務の内容の変更も可能です。たとえば、営業職から事務職への変更や、営業職から製造職への変更などが可能となります。
そこで、企業としては、高齢者雇用に対応した業務の創出、勤務体系の見直し(シフト化)および雇用条件の整備(人件費管理)が必要となるとかんがえます。また、労働者としては、今までの業務と違う業務への適応準備、賃金体系変更に伴う生活環境の変更への準備が必要となると思われます。まとめてみると
などの対応が求められます。
契約期間が定められた雇用の場合、その期間が満了すれば雇用契約は自動的に消滅します(雇い止め)。ただし、契約の更新が繰り返されていたり、契約更新時の基準が不明確であったりした場合、雇い止めができなくなります。つまり、このような場合に限って期間の定めがある雇用が、期間の定めのない雇用に自動的に代わってしまうということになります。これが、従来の考え方でした。
今回検討されている制度は、たとえ、契約更新回数が少なくても、また契約更新基準が明確であっても、通算して3~10年勤務していれば期間の定めのない雇用となってしまうというものです。
企業の対応
今回の制度でも、詳細は確定していませんが、有期雇用が無期雇用となるには、本人の申出によることが想定されています。そこで企業としては、有期社員と無期社員の間の業務の内容を明確化することが求められます。つまり、無期社員の業務内容と、有期社員の業務内容を比べて、有期社員のほうが自分に適していると考えれば、それを選択できるようにしておくのです。また、有期社員から無期社員へ変更された後の労働条件についての規制は明示されていなません。そこで、企業の対応としては以下のものが考えられます。
などの対応が考えられます。
以上、今年改革が検討される制度についてお話しました。それぞれが対応に時間がかかるものばかりです。今年制度化されなくとも、制度化されるのは時間の問題です。早い準備が良い雇用環境、労使関係の秘訣といえますので、対応の検討を始めるのも良いかと思います。私どもも随時情報の提供を進めてまいりたいと思います。