労働契約法の一部を改正する法律が8月10日に公布されました。
この法律は、有期労働契約を5年を超えて反復更新した場合に、無期労働契約に転換させることや、有期労働契約の反復更新の下で生じる雇止めに対する不安を解消させる等、働く方が安心して働き続けることができるようにすることが目的とされています。
今回の改正では、労働者保護の立場にある法律が、さらに保護を強化した感があります。
1.有期労働契約の期間の定めのない労働契約への転換
有期労働契約が5年を超えて反復更新された場合(※1)は、労働者の申込みにより、無期労働契約(※2)に転換させる仕組みを導入する。
(※1) 原則として、6か月以上の空白期間(クーリング期間)があるときは、前の契約期間を通算しない。
(※2) 別段の定めがない限り、従前と同一の労働条件。
2.「雇止め法理」の法定化
雇止め法理(判例法理)(※1)を制定法化する。
(※1)有期労働契約が反復更新により無期労働契約と実質的に異ならない状態で存在している場合、または有期労働契約の期間満了後の雇用継続につき、合理的期待が認められる場合には、雇止めが客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないときは、有期労働契約が更新(締結)されたとみなす。
3.期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止 有期契約労働者の労働条件が、期間の定めがあることにより無期契約労働者の労働条件と相違する場合、その相違は、職務の内容や配置の変更の範囲等を考慮して、不合理と認められるものであってはならないものとする。
1、3については公布の日から起算して1年以内の政令で定める日となります。
ポイント1の有期労働契約の期間の定めのない労働契約への転換が施行され、実際に適用を受けるまでには5年以上の猶予があるものの、有期労働契約社員を多く抱える企業にとっては、今から雇用形態の見直しについて検討していく必要があります。
平成24年8月29日、改正高年齢者雇用安定法が参議院にて可決成立しました。
これにより、平成25年4月1日より下記内容の改正法が施行されます。
法改正の趣旨は、雇用と年金の確実な接続(無年金・無収入となる者を生じさせない)にあります。つまり個人に年金が支給されるまでは、企業は原則として希望者全員の継続雇用する制度導入が必要になるということです。
平成24年10月2日、労働審議会職業安定分科会雇用対策基本問題部会において、「高年齢者雇用確保措置の実施及び運用に関する指針(案)」が示されました。
本指針では、改正高年齢者雇用安定法に基づき、事業主がその雇用する高年齢者の65歳までの安定した雇用を確保するために講ずべき措置(定年の引上げ、継続雇用制度、定年の廃止)に関し、その実施および運用を図るために必要な事項が定められることになります。
今回の改正により、労使協定で継続雇用の対象となる高年齢者に係る基準を定めることができなくなり、原則希望者全員を継続雇用の対象とする制度が求められるようになる中で、本指針では継続雇用しなくてもよいものについて以下のように示されています。
「心身の故障のため業務に堪えられないと認められること、勤務状況が著しく不良で引き続き従業員としての職責を果たしえないこと等就業規則に定める解雇事由又は退職事由(年齢に係るものを除く。以下同じ)に該当する場合には、継続雇用しないことができる。」
さらに、具体的な運用方法としては、以下のポイントが示されています。
①就業規則に定める解雇事由又は退職事由と同一の事由を、継続雇用しないことができる事由として、解雇や退職の規定とは別に、就業規則に定めることもできる。
②当該同一の事由について、継続雇用制度の円滑な運用のため、労使協定を締結することができる。
③解雇事由又は退職事由とは異なる運営基準を設けることは法改正の趣旨を没却する恐れがあることに留意する。
④継続雇用しないことについては、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当であることが求められると考えられることに留意する。
本指針は、継続雇用拒否の法的根拠になり、労使のトラブルを防ぐという狙いがあります。とは言え、継続雇用拒否を有効とするためには、客観的合理性・社会的相当性が求められるため、特に勤務態度等を理由として継続雇用しない場合は、問題行動に対する指導や注意の実績、記録、同様の者への対応等、定年前の労務管理が重要となります。
企業としては、新たな継続雇用制度の構築はもとより、人件費増への対応、新たな賃金制度設計、要員計画、教育計画、職場環境の整備等が必要になります。