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機関紙 KAWA-RA版 労務管理や社会保険に関する話題の情報を、タイムリーにお届けする当事務所オリジナルの機関紙です。

第86号 平成29年3月1日

給与ソフトでの残業代計算は本当に正しいですか?

年末調整、給与支払報告と給与担当にとっての大きな山場を越えて、久々に定例業務に戻れる時期がやってきました。3~5月は異動や昇給時期という会社も多いことから、何かと給与ソフトのマスタ設定を更新する機会は増えることかと思います。今後、労働保険年度更新、社会保険算定基礎と保険関係のもう一つの山場がやってくるまでの間に、実際の給与計算に関わるマスタ設定も確認、見直しをしておきましょう。
今回は、残業代計算が正しくできているか、適正な計算方法をお伝えします。顧問先様の賃金台帳等を見ると、給与計算ソフトを使って自動計算することも多いようですが、実はこの点が盲点になっていることも多いです。ソフト導入時に設定されていた例示計算式を、そのまま使用して自社の計算をしている場合があるからです。もちろんこれでは正しい計算とは言えません。残業代(時間外手当)を正しく計算するためには、計算方法に一定のルールがあります。ルール通りの計算ができているか確認をしていきましょう。

月給制・日給月給制の従業員はまず『時給換算』をします!

労働基準法では、時間単価の考え方をとっています。パートタイマーやアルバイトでは、1時間当たりの時給単価が決まっていることが多く、単価について問題になることは少ないです。日給制の場合も「時給単価×1日所定労働時間(8h等)」で決めていることが多いので同様に問題は少ないです。問題は、月給制や日給月給制のいわゆる正社員の時間単価をどう計算するかです。まずは基本給等を時間単位に換算する必要がありますので、以下解説します。

【時間単価の計算方法】

月給・日給月給制の場合の時給単価の計算方法は、以下の通りです。

月の所定賃金額  ÷  1か月の平均所定労働時間数

1.月の所定賃金額のルール

月給や日給月給といっても、構成は基本給もあれば各種手当もあります。どの手当を含めてどの手当が含まれないのかがわかりにくいようです。実際の給与計算や給与ソフトの設定で、基本給だけを計算の基礎にしていることも多いようです。残業代(時間外手当)計算では、基本給部分以外の手当も月の所定賃金額に含まれます。ただし、次の①~⑦の手当についてのみ含まれません。給与ソフトの設定も正しくされているか確認してみましょう。

①家族手当
②通勤手当
③別居手当
④子女教育手当
⑤住宅手当
⑥臨時に支払われた賃金
⑦1か月を超える期間ごとに支払われる賃金
自社の計算において、上記の手当などは計算上の月の所定賃金額から除かれているか検証してみましょう。上記手当は、労働とはあまり関係ない従業員個人事情による手当なので計算上の所定賃金とはしないのです。

~上記手当①~⑤につていは算入する場合もありますので要注意!~
時給相当額を低くする目的等で、従業員全員に一律に支給するような手当は、上記に列挙されていても月の所定賃金額に含めなければなりません。この点間違えて計算していないかを以下で確認してください。
①家族手当…扶養家族数に関係なく一律に支給されている家族手当
②通勤手当…距離にかかわらず一律に支給されている通勤手当
③住宅手当…
・従業員全員に定額で支給するもの
・住宅の形態ごとに一律に定額支給されるもの
(例:賃貸住宅居住者には2万円、持家居住者には1万円)
⑥・⑦臨時に支払われた賃金、1か月を超える期間ごとに支払われる賃金…
あらかじめ金額の確定した賞与は月の所定賃金額に算入することになるので注意しましょう。例えば年俸制をとっている場合、決定年俸の17分の1を月例給与とし、17分の5を2分して6月と12月に賞与として支給する場合等です。

2. 1か月の平均所定労働時間数のルール

月の所定労働時間数は毎月変動します。月によって30日、31日(2月は、28日、29日)。そうすると毎月計算式が変わることになり計算が大変です。実務では、年平均で月の労働時間数をカウントすることになっています。次の例示で説明します。

1日8時間労働で、完全週休2日制、祝日、年末年始休日他がある企業の例(年365日)

     
  • 年間所定労働日数(就業規則等による)240日
  •  
  • 年間所定休日(就業規則等による)125日
  •  
  • 1日の所定労働時間数(就業規則等による)8時間
  •  
  • 1年間の所定労働時間 240日×8時間=1,920時間
  •  
  • 1か月平均所定労働時間数 1,920時間÷12ヶ月=160時間

1年間の所定労働時間1,920時間を12ヶ月で割って1か月平均の所定労働時間数を計算します。上記計算例では、160時間になります。まずは自社の1か月平均所定労働時間を計算してみましょう。給与ソフトの事業所等のマスタ設定にも同様の項目がありますので、正しく設定されているか確認してみましょう。

実際に、残業代(時間外手当)を計算してみよう

給与計算ソフトの計算結果が合っているか、まずは手計算で確認しましょう

【前記企業での具体例】

月給制の従業員Aの月額給与内訳
・基本給 300,000円  ・家族手当 10,000円
・資格手当 20,000円  ・通勤手当 5,000円 給与合計 335,000円
上記ルールにそって計算すると 月の所定賃金額:320,000円
(基本給と資格手当は算入。1.のルールにより家族手当と通勤手当は除外)

320,000円÷160時間=2,000円 従業員Aの時間単価:2,000円です。
やっと時間単価が求まりました。あとは就業規則等で定めている割増率をかけていきます。
ここからは時給制・日給制と計算方法は同様です。
従業員Aが、20時間残業した場合 → 2,000円×1.25×20時間=残業代:50,000円
となります(1.25は、時間外労働の法定割増率)。

今回は、月給制・日給月給制の時間外単価の計算方法について計算の基礎となる給与額について解説しました。最近、労働基準監督署の調査も増えており、調査項目として必ず確認をされます。また、従業員の知識もインターネット等の普及で簡単に計算・確認できますので思わぬところで賃金不払いが問題とならないよう、自社の給与計算方法が正しく計算されているか、給与ソフトで自動計算を行っている場合は、設定が正しくされているか検証してみましょう。不明点等ございましたらご連絡ください。

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