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機関紙 KAWA-RA版 労務管理や社会保険に関する話題の情報を、
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第96号 平成30年11月1日

伴弁護士の法律の窓

相続人に対する株式売渡請求

[質問]
私と弟は、会社(非公開会社)を経営しております。発行済株式数は100株に対し、私は70株、弟は30株を保有しております。先日、弟が亡くなり、弟の子が相続をしました。私と弟の子とは、馬が合わず、今後の会社経営で対立が生じることが予想されます。そこで、弟の子が相続した30株について、取得する方法はありますでしょうか。

[回答]

  1. 発行する株式の全部について譲渡制限をしている会社を非公開会社といいます。非公開会社では、気心知れた株主が、自分らが望むように会社のあり方を決めることができるため、株主間の個人的な信頼関係が重要視されます。そのため、会社にとって、好ましくない株主に株式の譲渡があった場合、会社は当該譲渡を承認しないことができ、会社自らが取得をするか、別に買取人を指定するか等の措置を取ることができます。
    しかし、相続が発生した場合には、株式の譲渡に該当しないため、会社にとって好ましくない者に株式が渡ることを阻止することができません。
    そこで、会社にとって好ましくない者が株式を相続し、株主になることを防ぐために、法は、定款で定めをすれば、会社は、相続人に対し、相続した株式を売渡すよう請求をすることができると規定されています(会社法174条)。なお、この定款の規定は、相続発生後に設けても、株式売渡請求の行使をすることが可能です。
    ただし、この売渡請求は、会社が、相続があったことを知った日から1年以内に行使しなければなりません(法176条1項但書)。

  2. 会社から、相続人に対し売渡請求を行った場合、株式売買価格について双方協議の上定めることとなります。
    しかし、双方協議の上、株式売買価格が定まらない場合には、会社又は相続人から、裁判所に対して、株式売買価格決定の申立をすることができます。この申立は、会社側から売渡請求があった日から20日以内に行わなければなりません(法177条2項)。裁判所は、株式売買価格を定めるにあたり、会社からの売渡請求時における会社の資産状態その他一切の事情を考慮し決定するとされており(法177条3項)、市場価格が存在しない非公開会社においては、純資産方式、DCF方式、配当還元方式等様々な方法を利用し、株式売買価格決定をすることになります。

  3. 本件では、弟がお亡くなりになってから1年以内であれば、弟の子が相続した30株についての売渡請求をすることが可能です。その後、弟との株式売買価格協議がまとまれば問題ないですが、まとまらない場合には、裁判所に株式価格決定の申立を行う必要があります。
    この株式価格決定の申立は、上記にも記載をしましたように売渡請求を行った日から20日以内に行わなければいけません。この期間が経過しますと、会社側から弟の子に行いました売渡請求の効力がなくなってしまうため注意が必要です(法177条5項)。

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