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機関紙 KAWA-RA版 労務管理や社会保険に関する話題の情報を、
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第101号 令和元年9月1日

伴弁護士の法律の窓

配転命令の有効性

【質問】

私は、神奈川県内を中心に複数の営業店舗を展開している不動産会社A社を経営しております。
A社の正社員として勤務する従業員Bは、入社以来本店で経理の仕事を担当しております。しかし、Bは言葉遣いが悪く他の従業員から不満が出ており、私の経営判断を批判するなど問題のある従業員です。はっきり言って辞めさせたいです。
そうしたところ、たまたま県外の支店の営業人員に不足が生じましたので、Bを当該支店に転勤させ、慣れない営業の仕事を命じることとしました。
仮にBが自宅から異動先店舗に通勤する場合、片道3時間近くかかります。Bは自宅で病気の親の看護をしているため、転居はできないはずです。そのためBが転勤を嫌がることは明らかですが、命令を機に退職してくれれば良いと考えております。
Bに転勤を命じることは問題になりますか。

【回答】

従業員の配置に関して、職務内容又は勤務場所が相当長期間に渡り変更することを、「配転」といいます。
会社(使用者)は、就業規則等により、従業員に対して配転を命じることができる旨を定めておけば、従業員との間で個別の合意がなくとも、配転を命じることができます。
もっとも、配転命令権の行使も無制約ではなく、個別の事情により、配転命令が「権利の濫用」に該当し、無効となる場合があります。
具体的には、①配転命令につき業務上の必要性が存しない場合や、②業務上の必要性が存するとしても、当該配転命令が他の不当な動機・目的をもってなされたものであるとき又は労働者に対し通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものあるとき等、特段の事情の存する場合に、権利の濫用として無効と判断されます。
以下、A社の就業規則に配転命令権の定めがあることを前提に、Bに対する配転命令が権利の濫用に当たるか否かについて検討します。

①まず、Bの配転先は営業人員が不足していたということですから、支店の運営に必要な人員を補充するという意味で、一応の業務上の必要性は認められると考えます。②しかし、配転の実質的な目的はBを退職に追い込むことにあり、動機・目的が不当と判断されてしまいます。加えて、配転命令の結果、Bにとっては、通勤に関して重い負担が生じますし、親の看護にも支障が出ます。このようにBの生活に何の配慮もせず一方的に転勤を命じることは、従業員が通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるもの、とも判断されかねません。
したがって、Bに対する配転命令は無効となる危険が大きいです。その場合、Bが配転命令に従わなかったとしても、それを理由に解雇などの処分を下すこともできません。
A社としては、従業員教育という観点から真摯にBと向き合いつつ、将来の懲戒処分等も見据えて書面での注意指導を重ねていくべきでしょう。

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