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機関紙 KAWA-RA版 労務管理や社会保険に関する話題の情報を、
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第102号 令和元年11月1日

伴弁護士の法律の窓

残置物の処分方法!

【質問】

私は、アパート経営をしている大家です。先日賃料未払状況にあった賃借人Yと話がつき、退去してもらいました。ところが、退去後の部屋を確認すると、Y所有の動産類(以下、「残置物」といいます)がいくつか残っていました。
 このままでは、入居者を募ることができません。Yの残置物につき、私の方で勝手に処分をしても問題ないでしょうか。

【回答】

  1. 結論から申し上げますと、Yの残置物を勝手に処分するべきではないとのアドバイスになります。なぜなら、Yの残置物を勝手に処分したことで、次のような問題が生じる可能性があるからです。
    例えば、民事上の問題として、Yの荷物(所有物)を毀損したことによる損害賠償請求を起こされる可能性があります。
    刑事上の問題として、「他人(Y)の物を損壊」したとして器物損壊罪等が成立する可能性があります。
    このように、残置物だからといって勝手に処分をしてしまうと、無用な紛争に巻き込まれる可能性のあることに注意が必要です。
    質問者のケースであれば、Yに連絡し残置物の引取を求める方法が穏当です。Yが任意に応じない場合には、最終的に訴訟提起を検討し、残置物の撤去を求めていくことになります。
  2. 上記のようなトラブルを避けるために、Yが退去をする際に次のような合意書面を取り交わしておくと良いでしょう。
    例えば、「Yは、○月○日限り、本件○○号室を明渡す。Yが同室内に動産を残置した場合、Yは当該動産の所有権を放棄し、賃貸人が自由に処分することに異議がない。」等の内容で合意書面を取り交わしておけば、Yの所有権放棄の意思が明確となりますので、残置物を処分することが可能となります。
    しかし、上記所有権放棄の合意は、Yが退去したことによりYの支配から離れた残置物の処分につき有効であることに注意が必要です。Yが退去をしていない状況で、賃貸人が勝手にYの残置物を処分できるとすれば、Yを部屋から強制的に退去させることを認めることに他ならず、自力執行禁止の原則に反することになるからです(東京高裁平成3年1月29日判例時報1376号64頁参照)。
  3. 建物明渡を巡っては、残置物処理等を含め様々な問題が生じます。無用な紛争に巻き込まれないためにも、気になることがあれば早めに専門家へ相談されることをお勧めします。

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