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機関紙 KAWA-RA版 労務管理や社会保険に関する話題の情報を、
タイムリーにお届けする当事務所オリジナルの機関紙です。

第127号 令和6年1月1日

本年4月から労働条件明示のルールが変更されます。

労働者を採用する場合には、書面による労働条件の明示を行わなければなりません。(労働基準法第15条)
この労働条件通知書には、次の事項を明示しなければなりません。

  • a.労働契約の期間
  • b.有期労働契約の更新の基準
  • c.就業場所・従事すべき業務
  • d.始業・終業時刻、所定労働時間超えの労働の有無、休憩時間、休日、休暇、2交代制等に関する事項
  • e.賃金の決定・計算・支払方法、賃金の締切・支払時期、昇給に関する事項
  • f.退職(解雇を含む)に関する事項
  • g.その他

本年4月からは、cの「就業場所・従事すべき業務」について、「変更の範囲」を明示しなければならなくなりました。また、有期労働契約の場合はこれに加えて、「更新上限の有無と内容」、「無期転換申込機会」の明示、「無期転換後の労働条件」の明示が必要となります。
このそれぞれについて具体例の一部をご案内させていただきます。

就業の場所についての変更範囲の例(範囲を限定しない場合)

「本店及び全ての支店、営業所、労働者の自宅での勤務」

従事すべき業務についての変更範囲の例(範囲を限定しない場合)

「会社の定める業務」
このほか、変更の範囲を限定する場合の例につきましては、お問い合わせください。

更新上限の有無と内容についての例

「契約の更新回数は3回まで」

無期転換申込機会の明示についての例

「本契約期間中に無期労働契約締結の申込みをした時は、本契約期間満了の翌日から無期雇用に転換することができる。」

無期転換後の労働条件の明示についての例

「無期転換後の労働条件は本契約と同じ」

例示につきましては、各事業所様の実態により明示内容も変わると思いますので、お気軽にお問い合わせください。

「130万円の壁」への対応について

令和5年10月から始まった「年収の壁・支援強化パッケージ」についての概要は前回の記事でご案内させていただきました。

その中の「130万円の壁」は、パート・アルバイトで働く被扶養者(従業員100人以下の会社で週30時間未満で働く方や、従業員101人以上の会社で週20時間未満で働く方)が対象となります。
パート・アルバイトで働く被扶養者について、毎年の被扶養者認定時に、一時的に年収が130万円以上となる場合に、人手不足による労働時間延長等に伴う一時的な収入変動である旨の事業主の証明を添付することで、継続して被扶養者認定を受けられます。これが「130万円の壁」の対応です。

今回はその「130万円の壁」について、下記の4点を中心にご案内させていただきます。

  1. ①一時的な収入変動として認められるケース
  2. ②年収の上限
  3. ③事業主の証明について
  4. ④利用できる回数
①一時的な収入変動として認められるケース

一時的な収入増加の要因としては、主に時間外勤務(残業)手当や臨時的に支払われる繁忙手当等が想定されます。
主なケースとしては、

  • 他従業員が退職・休職したことにより、当該労働者の業務量が増加したケース
  • 業務の受注が好調だったことにより、当該事業所全体の業務量が増加したケース
  • 突発的な大口案件により、当該事業所全体の業務量が増加したケース

などとされています。
但し、今後も収入が増えることが確実な時間給の引き上げや新たに恒常的な手当てが支給される場合による収入の増加は該当しませんので留意してください。

②年収の上限

①の場合の具体的な上限額は、厚生労働省から提示されていません。
年収130万円以上になった場合でも、その要因が人手不足による労働時間延長等に伴う一時的な収入変動であり、事業主の証明があれば、継続して被扶養者でいられるということになります。

③事業主の証明について

事業主の証明の様式は、厚生労働省のHPからダウンロードの上、ご利用いただけます。

『被扶養者の収入確認に当たって「一時的な収入変動」に係る事業主の証明』
「雇用契約書等により本来想定される年間収入」、「人手不足による労働時間延長等が行われた期間」「実績額」の記載が必要となります。
記載内容の確認にあたり、別途雇用契約書等の提出が求められる場合もあります。

新たに被扶養者の認定を受ける際や、健康保険組合等の保険者が被扶養者の資格確認を行う際に、年収130万円以上になる場合に、通常提出が求められる書類と併せて提出することになります。

④利用できる回数

あくまでも「一時的な事情」として認定を行うため、連続2回までとしています。
現在被扶養者である場合は、年に1回の被扶養者の資格確認がありますので、最大2年間ということになります。年1回とは異なる頻度で被扶養者の資格確認をしている場合は、個別に健康保険組合等の保険者への確認が必要です。

残業等によるものであれば、年収の上限がなく被扶養者のままでいられるといった制度ではありますが、最終的には被扶養者の認定や資格確認を行う保険者の判断になります。被扶養者が被保険者の年間収入を上回る場合は、被保険者がその世帯の生計維持の中心役割を果たしていると認められず、被扶養者の認定が取り消される可能性もあります。「上限額がない」といったような表現が一人歩きすることのないようにする必要があります。

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