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機関紙 KAWA-RA版 労務管理や社会保険に関する話題の情報を、
タイムリーにお届けする当事務所オリジナルの機関紙です。

第135号 令和7年5月1日

伴弁護士の法律の窓

【テーマ】

採用選考

【質問】

当社では、新たに社員を採用することを考えています。採用選考時に気を付けなければいけないことはありますか。例えば、採用面接の時に質問してはいけないことはありますか。

【説明】

1 使用者は、労働者を採用するにあたり、どのような人を雇うか、どのような条件で雇うかについて、法律などの特別の制約がない限り、原則として自由に決定することができます。また、使用者は、応募者を採用するか否か判断するために、応募者に一定の事項を尋ねるなどその応募者の情報を調査する自由もあります。
ただし、使用者の有するこれらの採用の自由は、無制限に認められるわけではなく、法律により制限されていたり、調査時において配慮すべき事項があったりします。

2 採用の自由に対する法律による制限の典型例としては、男女雇用機会均等法が挙げられます。男女雇用機会均等法5条には、「事業主は、労働者の募集及び採用について、その性別にかかわりなく均等な機会を与えなければならない」と定められており、採用選考時における男女差別が禁止されています。

3 採用面接など採否決定のための情報調査の場面でも、使用者は応募者に対して何でも質問してよいわけではありません。採用選考は、応募者の基本的人権を尊重しつつ、応募者の適性・能力を基準として行われることを前提とするものです。そのため、応募者の人格や尊厳、プライバシーを侵害する質問はすべきではありません。また、応募者の適性・能力を知るための事柄と無関係な事柄を質問するのも避けるべきです(なお、どのような事柄が応募者の適性・能力を知るための事柄かは、募集する職種や業務内容との関係によるでしょう)。
厚生労働省が公表している「公正や採用選考を目指して」というパンフレットには、一般的に採用選考時に配慮すべき事項として、以下の①~⑭の項目が挙げられており参考になります。以下の①~⑪の事項を、エントリーシート・応募用紙に記載させる、面接時にたずねる、作文の題材にするなどによって把握することや、⑫~⑭を実施することは、職業差別につながるおそれがあるとされています。

(a) 本人の責任のない事項の把握
①本籍・出生地に関すること
②家族に関すること(職業・続柄・健康・病歴・地位・学歴・収入・資産など)
③住宅状況に関すること(間取り・部屋数・住宅の種類・近隣の施設など)
④生活環境・家庭環境などに関すること
(b) 本来自由であるべき事項(思想・信条にかかわること)の把握
⑤宗教に関すること
⑥支持政党に関すること
⑦人生観・生活信条などに関すること
⑧尊敬する人物に関すること
⑨思想に関すること
⑩労働組合(加入状況や活動歴など)、学生運動などの社会運動に関すること
⑪購読新聞・雑誌・愛読書などに関すること
(c) 採用選考の方法
⑫身元調査などの実施
⑬本人の適性・能力に関係ない事項を含んだ応募書類の使用
⑭合理的・客観的に必要性が認められない採用選考時の健康診断の実施

4 採用選考について使用者に大きな裁量があるため意識が向きづらいところですが、採用選考に配慮すべき事項に留意しつつ、面接をはじめとした採用選考活動を行う必要があるでしょう。

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