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機関紙 KAWA-RA版 労務管理や社会保険に関する話題の情報を、
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第137号 令和7年9月1日

伴弁護士の法律の窓

【テーマ】

社員の資格取得にかかる会社の費用負担

【質問】

業務命令として社員に資格試験を受験させた場合、試験に合格した者にだけ、資格取得にかかった費用を支払うことはできますか?

【回答】

業務上必要で取得を義務付けている資格を、業務命令によって社員が取得する場合、その費用は、合格・不合格にかかわらず、原則として会社が負担しなければならず、試験に合格した者にだけ支払うという運用をすることはできません。

【解説】

1 そもそも資格の取得を社員に命じることができるか
使用者は、社員に対して、業務遂行のための指示や命令を出す権限を有しており、これを労務指揮権といいます。使用者はこの労務指揮権に基づき、社員に対して、業務命令をし、業務上必要で取得を義務付けている資格の取得を命じることができると解されています。
したがって、使用者は、社員に対して、業務上必要で取得を義務付けている資格の取得を命じることができます。

2 合格者に限り、会社が資格取得の費用を負担することができるのか
資格の取得が社員の自主性に任されているのであれば、その費用を合格者に限って会社が負担することは問題ありません。
しかし、取得させようとする資格が、業務上必要で取得を義務付けているものである場合は、当該資格の取得にかかる費用は、原則として会社の業務にかかる経費であり、使用者が負担すべきと考えられています。
問題は、合格者にのみ資格取得にかかる費用を会社が負担するという運用が許されるかという点です。
この点、資格試験を受験した社員が不合格であった場合を、労働契約の不履行があったと捉える考え方があります。そのように考えると、会社が不合格者の費用を負担しないということは、不合格者に費用を自己負担とさせることとなり、これは、実質的には、労働契約の不履行についての賠償を求めていると評価される可能性があります。労働契約の不履行について賠償を予定することは労働基準法第16条で禁止されており、合格者にのみ費用を支払い、不合格者は自己負担とする運用は、労働基準法16条に違反するおそれがあり、問題があります。
したがって、業務命令により、業務上必要で取得を義務付けている資格を取得させようとする場合、当該資格の取得にかかる費用は、合格・不合格にかかわらず、会社が負担しなければなりません。

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