前号に引き続き、自動車管理について解説致します。
マイカー通勤管理のポイント
会社の立地によっては通勤手段が自動車を使うしかないといった場合、または特定の部署や個人についてマイカーでの自動車通勤を認めた方が本人の通勤の負担が軽くなり、仕事に打ち込める環境が整うという場合等、各企業の必要により、マイカー通勤を会社の制度として運用するためには、マイカー通勤に関する規程が必要です。
- 運転者の運転免許証を確認する
運転免許証の有効期限が切れていると無免許運転をしていることになります。毎年1回以上、マイカー通勤者から運転免許証のコピーを提出してもらう必要があります。
- 任意保険の加入を義務付ける
従業員が起こした自動車事故について「使用者責任」や「運行供用者責任」を企業が問われた場合、賠償責任は事故を起こした本人だけではなく、企業も問われることになります。従業員が任意保険に未加入で損害賠償額を支払う能力がなければ、企業に賠償を求められることが十分に考えられます。
そこでマイカー通勤者には、一定額以上の任意保険の加入を義務付ける必要があります。
一般的には対人無制限、対物は状況に応じた最低額を決め、この基準に達しない保険契約では、マイカー通勤を許可しないこととします。
そして、マイカー通勤を続ける限り、任意保険契約更新時には必ず確認書類を提出させます。会社は台帳を整備する等この管理にもれがないようにする必要があります。
- 誓約書を提出させる
マイカー通勤をするにあたって、現実的には駐車場での盗難事故や破損、通勤途中での道路交通法違反などのトラブルが発生する可能性があります。
このようなトラブルは原則的にはマイカー通勤者自身で対応するよう誓約書を提出してもらう必要があります。
- マイカーの業務使用を原則禁止する
マイカーを業務に使用すればそれば業務車両となり、会社の管理責任が厳しく問われます。安易にマイカーを業務に使用させるべきではありません。
事情によりマイカーを業務に使用させる場合には、マイカー業務使用に関する規程を整備し、厳格に管理することが求められます。
社用車管理のポイント
- 運転者の運転免許証を確認する
マイカー通勤と同様、毎年1回以上、社用車を運転する従業員から運転免許証のコピーを提出してもらう必要があります。
- 法令遵守と違反事項の報告義務
社用車を運転するに際しては、駐車違反やスピート違反等の行政罰を受けないように運転すること、行政罰を受けた場合には、必ず会社に文書で報告することを義務付けます。
- 社用車運行状況の把握と鍵管理の徹底
従業員が勝手に鍵を持ち出して、社用車を会社の許可なく使用したり、私用で使うことのないように、社用車運行状況を把握したり鍵の保管場所を徹底するなどの取り組みが必要です。
自転車管理のポイント
自転車は、道路交通法で「軽車両」と定義されており、広い意味では「車両」と考えられます。従って自転車事故も業務執行中であれば「使用者責任」や「運行供用者責任」を問われることになります。自転車通勤の場合でもこのリスクは生じます。
そこで業務使用や通勤で使う自転車に関しても自動車同様保険に加入し、事故の備えることが求められます。
具体的には自転車の任意保険のひとつである「TSマーク付帯保険」に加入したり、その他損害保険会社が取り扱う保険に加入することが必要でしょう。
規程を作るだけではなく、大切なのは日々の運用です。また、交通法規遵守の精神を常に持ち続けるよう安全運転教育を定期的に行うなど、会社としの取り組みが求められます。
自転車事故で5000万円の支払い命令
道路交通法が強化され自転車運転に対する社会的責任、刑事的責任やモラル、マナーが取りざたされているのは周知の事実ですが、併せて自転車による事故も増え、民事の賠償責任も高額化しています。
女子高校生(当時)が自転車走行中に女性と衝突し後遺障害を負わせた事故の裁判では、横浜地裁は自転車を運転していた加害者に対して約5000万円の支払い命じました。(2005年11月 横浜地裁)このように自転車を運転する責任は重くなっています。