「元従業員」の要求が職場復帰にある場合、会社の考えと正反対であるわけですが、だからといって直ちに交渉成立の見込がないとして交渉を終結させることは避けるべきです。法律上、「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」とされています(労働契約法16条、従来の労働基準法18条の2)。
従って、会社は、自らがなした解雇が、客観的に合理的な理由があること、社会通念上相当であることを組合に説明する必要があります。この判断は、あくまでも会社の判断であり、労働者の判断とは異なっているはずです。従って、解雇についてのそのような説明もなく、職場復帰では合意の見込がないとして、会社が一方的に交渉を打ち切ることは、誠実交渉義務に違反し、不当労働行為(労働組合法7条2号)となるでしょう。
組合が解雇の無効性を争っても職場復帰は難しいと判断すれば、第2次的要求として、会社に対して、金銭的解決を主張してくるでしょう。
これに対して、「元従業員」の真の要求が、金銭にある場合、会社は、訴訟リスクを回避するために、解雇予告手当(労働基準法20条)以外にも「解決金」を支払うことで問題の解決を図る方がよいでしょう。解雇問題が裁判沙汰になれば、弁護士費用という金銭的負担だけでなく、訴訟準備の労力を割かれることになるからです。
金銭的解決を図る場合、交渉術として、最初にどのくらいの金銭提示をすればいいか、という点ですが、交渉を早期に成立させたいのであれば、最初から最終的妥結金額と思われる数字に近い金額を提示した方がよいでしょう。オークションの競りのように、会社が、少しずつ解決金の金額を上げていくと、組合は、粘ればまだまだ上がると考えて容易に妥協しないからです。