事業主は、その規模・業種に関係なく安全衛生法及び安全衛生規則の定めに従い、労働者に対して医師による健康診断を行うことが義務付けられています。事業主が実施を義務付けられている健康診断は、雇入れ時及び定期に行う「一般健康診断」と有害業務に従事している者に対する「特殊健康診断」があります。
健康診断を受診させるにあたり、安全衛生法では受診項目や費用負担、また健診結果の保存等が定められています。年に1回の定期健康診断等は会社の義務ですから、毎年計画的に実施していきましょう。
一般健康診断の主なものとして、雇入れ時の健康診断と年1回の定期健康診断、深夜業を含む業務等の特定業務従事者の健康診断があります。また、健康診断の項目は法定されています。
健康診断を実施する時、事業主はその実施が義務付けられていますので、その健康診断に要する費用を事業主が負担する事は当然であるとされます。
ただし、事業主が費用を負担すべき健康診断は、安全衛生法第66条1項から4項(一般健康診断や特殊健康診断)に定められた健康診断であり、労働者自らが定期健康診断項目以上の健康診断を希望して受診する場合は、その費用は当然事業主が負担すべきことにはなりません。
また、健康診断で異常所見があるとされた場合は「結核」を除き、事業主に二次健康診断の実施は義務付けられていませんので、費用は事業主負担とならないと言えます。
なお、血圧・コレステロール・血糖等の全項目に異常所見があるとされた場合、労働者は労災保険法に基づき、二時健康診断を無料で受診できます。
健康診断受診している時間は賃金が支払われるのでしょうか。
いわゆる「一般健康診断」は、一般的な健康の確保を目的としているので、業務遂行に関連して行われるものではありません。ですから、受診中の時間に対して賃金を支払う義務はありません。
ただし、労働者の健康は事業の円滑な運営に不可欠なものですから、受診中の賃金は会社で負担するのが望ましいとされています。多くの会社では所定労働時間内に健康診断を実施し、その時間について賃金カットをしているケースはほとんどみられません。
一方、「特殊健康診断」については、業務遂行に絡んで実施しなければならないものですので、受診中の時間は労働時間とされ、賃金を支払わなければなりません。また、法定労働時間外に行われた場合には、割増賃金を支払わなければなりません。
事業主は、健康診断の結果を記録しておかなければなりません。健康診断個人票作成し、5年間保存しておくことが安全衛生法で義務付けられており、作成・保存義務を怠った場合は処罰されます。
また、健康診断の結果は遅滞なくその健康診断を受診した労働者へ通知しなければなりません。