使用者は労働者に対して毎年決められた日数の有給休暇を与えなければなりません。
年次有給休暇は、雇い入れ日から6ヵ月継続勤務し所定労働日の8割以上出勤した者に対して最初は10日与えられます。
その後1年ごとの勤務年数に応じて8割以上出勤する条件を満たせば、雇用形態に関らず(たとえパートタイマー・アルバイトであっても)条件を満たした従業員に対して所定の日数が与えられるものです。年次有給休暇を取る権利は2年で時効によって消滅します。
年次有給休暇の買い上げは法律違反です。ただし次の場合は認められています。
なお、年次有給休暇の買上げ金額については法律上の基準はなく、労使が自主的に決定することになります。
具体的な基準としては、法定年休の取得時に支払われる賃金額である①「平均賃金」② 「所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金」③「健康保険法第3条に定める標準報酬日額」のいずれかを用いることになると考えられますが、法律上の基準はないため法定年休の取得時に支払われる賃金額を下回っても構いません。
しかし、あくまでも結果的に年次有給休暇権が消滅してしまう場合であり、これを制度化してしまうと、労働者が買い取りを期待して年休権の行使を差し控え、その行使を妨げる結果になる可能性がありますので、このような制度化は好ましいものではありません。
特に買上げが、年次有給休暇を行使しないことを条件とすることが明らかである場合には、このような取扱いは法律上無効であり、また買上げたことを理由として年次有給休暇権の行使を拒否した場合は、労働基準法第39条違反となりますので注意が必要です。
厚生労働省が10月20日発表した就労条件総合調査によると、平成22年の正社員の年次有給休暇取得率は48.1%で、前年から1.0ポイントの上昇にとどまりました。
政府は新成長戦略で、2020年までに取得率を70%へ引き上げる目標を掲げているにもかかわらず、実態は程遠いことが改めて示されました。
しかし厚生労働省は「完全取得すべきで、早急な改善が必要」としており、企業は今後さらに、年次有給休暇の取得を前提とした労務管理が必要でしょう。