「うちの課長以上は管理職だから、残業手当は必要ない」などとよく言われることがありますが、会社内で管理職の社員でも、労働基準法上の「管理監督者」に当てはまらないことがあります。権限も与えられず、相応の待遇もないまま肩書きだけを「課長」といっても、残業手当を支払わないでよい「管理監督者」ということにはなりません。
また、「管理監督者」は法律上の労働時間等の制限を受けないため、何時間働かせてもよいとの誤解もありますが、会社は「管理監督者」であっても健康を害するような長時間労働をさせることはできません。
管理監督者といっても役員とは違い、労働者であることには変わりはないのです。
管理監督者に当てはまるかどうかは役職名ではなく、その社員の職務内容、責任と権限、勤務態様、待遇を踏まえて実態により判断します。
すなわち、「管理監督者」とは、名称にとらわれずに、実態に即して判断されることになります。
「管理監督者」かどうかは、労働の「質」「量」、及びそれに対する「報酬」が総合的に判断されることになります。どれか1つでも該当しない場合は、「管理監督者」ではないと認定される可能性が高いです。
例えば「経営会議等の重要な会議への参画権限なし」「タイムカード等による他の一般社員と同等の勤怠管理をして、遅刻欠勤早退控除をする」「役職手当5~10万円の上乗せ」などをしている管理職を「管理監督者」としているケースが見受けられますが、果たして本当に「管理監督者」に該当するのか検討する必要があります。
労働基準監督署の指導のおいても、管理監督者の範囲について、会社側への実態に即した見直しが求められているように感じます。
明確な数値の基準はなく、あくまで各企業で実態に即して判断することになりますが、最近の行政指導の動向から、管理監督者として認められるのは企業全体の10%程度ではないでしょうか。
賃金債権の時効は2年ですから、管理監督者から外れた社員には、場合によっては2年分の残業代の未払い賃金を支払わなければなりません。
現状の管理監督者の扱いを曖昧にしておくと近い将来に「2年分の未払い賃金」の支払いという、会社としては莫大な費用が発生するリスクがあります。
従って、問題を先延ばしするのではなく、今一度管理監督者の範囲を見直し、必要があれば実態に応じた「制度」の見直しを実施することをおすすめいたします。