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機関紙 KAWA-RA版 労務管理や社会保険に関する話題の情報を、タイムリーにお届けする当事務所オリジナルの機関紙です。

第69号 平成26年5月1日

契約期間の定めのある従業員の雇い止めが認められた事例

~最終契約に入れた不更新条項の効力にについて~
東芝ライテック事件(横浜地裁25.4.25判決)

ユニクロや、イケアに代表されるように、契約期間の定めのある従業員を契約期間の定めのない従業員への転換が話題となっています。
そこで、今回は契約期間の定めのある従業員の契約更新につい考えるのによい事例をご紹介いたします。

事案の概要

今回の従業員は、ハリソン東芝(東芝ライテックに吸収合併)との間で3か月の有期労働契約の更新を76回繰り返して勤務していた。そして、最終契約において、それ以降の契約の更新はしない旨を告げられた上で、「今回をもって最終契約とする」旨の文言(「不更新条項」)が記載された労働契約書に署名・押印していた。会社はこれにも基づき、最終契約をもって契約を更新しなかった。従業員は、労働契約を更新しなかったことが雇止めに当たり、その雇止めは解雇権濫用法理の類推適用により許されないと主張して、労働契約に基づく地位確認と、未払い賃金の支払いを求めた事例。

裁判所の判断

最終契約において不更新条項がある契約を締結したとしても、これまで長年にわたってハリソン東芝に勤務してきた従業員にとって、労働契約を終了させることは、著しく不利益なことであるから、労働契約を終了させる合意があったと認めることはできない。
そして、更新回数の多さや雇用が継続されてきた期間、さらには従業員の従事していた作業が臨時的なものではなく、むしろ基幹的なものであったといえることに鑑みるならば、従業員のハリソン東芝との間の雇用継続に対する期待利益には合理性があるというべきであり、本件雇止めに解雇権濫用法理が類推適用されると解するのが相当である。
もっとも平成22年11月以降は契約更新の都度、上司から従業員の労働契約が平成23年9月末日までとなる見込みであると告げられ、本件労働契約締結の際には、上司から今回が最終契約となるのでそれ以降の契約の更新はしない旨を告げられた上で「今回をもって最終契約とする」旨の文言が記載された本件労働契約書に署名、押印している。
また、本件雇止めの当時、ハリソン東芝は、業績悪化により、平成20年度以降巨額の赤字を計上しており、人員削減の必要性が高かったといえる。そして、説明会を開催して従業員に対しその内容の説明を行っていること、従業員が加入した組合からの団体交渉の申入れに応じ、3回にわたり団体交渉を持ち、合意には至らなかったものの、従業員の退職に際して慰労金の支払や派遣会社への就職のあっせんを提案するなどしており、手続的に著しく相当性を欠いているとはいえないことが認められ、これらの事情を総合するならば、本件雇止めが客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当として是認することができないものであるということはできない。
したがって、本件雇止めが解雇権の濫用に当たるということはできず、従業員の主張は採用することはできないとした。

考察

契約期間の定めがある雇用に対する雇い止めについて、いわゆる「不更新条項」の効力にかかわる裁判例といえます。
契約が更新されず、労働契約が終了するにあたり、終了までのアプローチとしては3つのパターンが考えられます。

  1. 労働者からの申し出
  2. 労働者と使用者との合意
  3. 使用者からの申し出

①の場合は、基本的に制限なく認められる。つまり、終了

②の場合は、合意の有効性について判断され、

  1. 有効と判断されれば、基本的に終了する
  2. 無効と判断されれば、使用者からの申し出と同視され、さらに判断はつづき、③の場合と同じ判断になる

③の場合は、解雇制限規定(解雇権濫用法理)が類推されるか否かの判断になり

  1. 類推されないと判断されれば、基本的に終了する
  2. 類推されると判断されれば、濫用か否かの判断になり
    1. 濫用でないとなれば、終了し
    2. 濫用であるとなれば、雇用が継続することになる

会社としては、仮に①は仕方がないとすると、②と③の取扱いについて理解する必要があると思われます。そして、今回の裁判は、②事例であり、まず②のBにあたると判断され、③のBへ流れ、結果アという判断がされたものです。

②のBと判断された理由は、「長年当会社に勤務していたこと」が挙げられています。
③のBと判断された理由は、「更新回数が多いこと」が挙げられています。

そして、アと判断された理由は以下の3つでした。
「不更新条項があったこと」
「会社業績が悪かったこと」
「手続きが著しく不相当でなかったこと」

今回、会社業績が良くても不更新条項があれば雇用契約は終了したか否かまでは判断できません。しかし、「不更新条項」の効力が少なからず認められたと考えることができる点において、契約期間の定めのある従業員の契約更新に関し参考になる裁判例といえます。

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