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機関紙 KAWA-RA版 労務管理や社会保険に関する話題の情報を、タイムリーにお届けする当事務所オリジナルの機関紙です。

第74号 平成27年3月1日

「残業代ゼロ」という制度を考える

最近、「残業代ゼロ」という新聞記事をご覧になるかと思います。そこで今回は、「残業代ゼロ」という制度を既存の制度との違いを中心に考えてみたいと思います。

労働法の考えでは、賃金は労働時間の長さによって増減します。この考えの基礎となっているのは以下の2つです。

  1. 労働時間単位の効率は変わらず、したがって、長さによって成果物の量が変わる
  2. 評価は、質ではなく、量に比例する

しかし、効率は人により違い、また量ではなく質に高い評価がなされることが多くなってきました。こうなると、従来の労働法の考えは合いません。
そこで、労働時間の長さと賃金の関係を分断した制度が必要とされ、これを「残業代ゼロ」といっているのです。
現在の労働法でも、労働時間の長さと賃金を切り離した制度はございます。それは次の2つになります。

  1. みなし労働時間制
  2. 適用除外

それぞれの内容は次の通りとなります。

1.みなし労働時間制

みなし労働時間制には、裁量労働制と、事業場外のみなし労働時間制という2つの制度があります。

a.裁量労働制

要件
①雑誌の編集やデザイナーなどクリエイティブな専門的な業務をおこなっているか、事業の運営に直接影響するような企画・立案・調査・分析などの専門業務を行っている人が対象
②労使協定、労使委員会の決議が必要

効果
あらかじめ定めた時間労働したものとみなされる。
つまり、労使協定等であらかじめ定めた時間分の賃金を払っていれば、実際の労働時間がそれより長くても賃金の追加支払いが、基本的には必要ないということになります。

b.事業場外のみなし

要件
①事業場外で業務についたこと
②労働時間の算定が困難なこと

効果
裁量労働と同様

2.適用除外

要件
①監督もしくは管理の地位にある者であること

監督もしくは管理の地位にある者とは
①賃金等について、その地位にふさわしい処遇がなされていること
②現実の勤務態様が、労働時間等の規制になじまないようなものであること(出退勤時刻の自由)
③重要な職務、責任と権限を有していること

効果
時間外、休日労働の法規制の適用が除外され、時間外、休日労働の割増賃金の支払いが必要なくなる。

注意点
①裁量労働制であっても労働時間の把握は必要
②裁量労働制であっても、休日出勤、深夜の割増賃金の支払いは必要(みなし労働時間が8時間を超える場合は、時間外労働の割増賃金も必要)
③管理監督者であっても、深夜の割増賃金の支払いは必要

新しい、「残業代ゼロ」といわれている制度は、その実質的効果として裁量労働制と類似しています。つまり、裁量労働制の拡大という側面があります。今後、詳細は決まってきますが、「残業代ゼロ」を検討する場合、今のうちから裁量労働制の仕組みを理解しておくことが大切となります。

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