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機関紙 KAWA-RA版 労務管理や社会保険に関する話題の情報を、タイムリーにお届けする当事務所オリジナルの機関紙です。

第74号 平成27年3月1日

寺崎弁護士の法律の窓

川口社労士法人 協力弁護士 寺崎時史氏

正社員30名くらいの企業を経営していますが、保険勧誘員の人から、従業員を被保険者、会社を保険金受取人とする生命保険(団体定期)に加入することを勧められています。保険料を経費化できるというところがセールスポイントらしいのですが、どのようなことに注意しなければならないのでしょうか。
まず、当該保険契約が有効に成立するためには、被保険者たる従業員の同意が必要です(保険法38条、旧商法674条1項)。
理由は、①生命保険は、定額保険(死亡の場合は保険金が〇〇〇〇万円と契約時から決まっている保険)ですから、被保険者が死亡した場合に保険金受取人が多額の保険金を期待するという保険の賭博化のおそれがあること、②保険金受取人による事故招致という道徳的危険があること、③自らの生命が他人により勝手に保険に付されないという人格権的な利益の保護を図るということです。ちなみに、①と②の危険が現実化したものが保険金殺人・保険金詐欺事件です。
会社が団体定期保険に加入する目的は、保険料の経費化による利益の留保だけではありません。会社が不慮の保険事故で用意しなければならない死亡退職金や死亡弔慰金の原資とするという目的や代替雇用者の採用や育成費用などの損失を填補する目的があります。
とはいえ、会社が労働者の死亡によって大きな利 得を得る結果になることが常に是認されるわけではありません。
団体定期保険には、保険契約の本文に加えて、「保険金の全部又はその相当部分は、退職金又は弔慰金の支払いに充当する」旨の付保規定があります。
裁判例では、会社が従業員に掛けた生命保険の保険金の帰属とその金額が争われました。次回は、この点を述べたいと思います。

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