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機関紙 KAWA-RA版 労務管理や社会保険に関する話題の情報を、タイムリーにお届けする当事務所オリジナルの機関紙です。

第84号 平成28年11月1日

寺崎弁護士の法律の窓

「不動産仲介業の会社を経営していますが、女性職員が婚姻し、夫の姓を名乗ることになりました。会社としては、当該職員の社会保険等は戸籍上の姓で処理するしかないのですが、当該職員から社員証、タイムカード、名刺等は旧姓の使用を認めて欲しいと求められました。会社としては、労務管理が煩雑になるので、戸籍上の姓で統一したいのですが、旧姓の使用を認めなければならないのでしょうか。」
結論から言いますと、女性の旧姓使用を認めた方(ある調査によると、旧姓使用を3分の2の企業が認めているとのことです。)が便宜に資することは言うまでもないのですが、「認めなければならないとまでは言えない」ということです。
2015年12月16日、最高裁は、夫婦同姓を規定した民法750条は憲法13条、14条1項、24条に違反しないとの判断をしました。最高裁の多数意見は、夫婦同姓を規定しても違憲とはいえないとするものですが、その理由の一つとして、夫婦同氏制は、婚姻前の氏を通称と使用することまで許さないものではないとしています。
一方で、2016年10月11日、東京地裁が「職場(本件では、私立中高一貫校の女性教師のケース)で戸籍上の氏名の使用を求めること(=旧姓の使用を認めない)には合理性、必要性がある」との判断をしました。
この裁判例は、最高裁の判断と矛盾するかのような疑問が呈されていますが、しかし、最高裁の判断が先例として拘束力を有する部分は、その判断に直接必要とされた(決め手となった)理由づけです。最高裁は、合憲判断をするにあたり、夫婦同姓制度が、憲法の想定する婚姻制度、家族制度にとって不合理とまではいえないことを直接的な理由としていますので、通称として旧姓を使うことを禁止していないということは、あくまでも副次的理由づけにすぎないのです。従って、この裁判例は、最高裁の判断と矛盾するとは言えないのです。

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