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機関紙 KAWA-RA版 労務管理や社会保険に関する話題の情報を、タイムリーにお届けする当事務所オリジナルの機関紙です。

第88号 平成29年7月1日

今月から

法律の窓はいままで寺崎先生にお願いしておりましたが、今号からは新たに、伴先生にご担当していただくことになりました。伴先生は寺崎先生と同期の弁護士先生で、寺崎先生とはまた違った切り口で皆様のお役に立つようなお話しをいただけると思います。宜しくお願いいたします。

有期雇用契約の更新を拒否できますか?

(相談内容)

当社のパート従業員のAさんは1年の有期契約で、数回契約を更新しているのですが、最近の勤務態度が悪いので契約の更新をしないと伝えたところ、違法だと言われてしまいました。契約終了の1か月以上前に更新しないことを伝えていますが、法律上問題があるのでしょうか?

(回答)

たとえば期間限定のイベントスタッフなど、更新が想定されていない有期雇用契約の場合には、更新しないことが問題となることはありません。しかし、更新を繰り返すことが想定される有期雇用契約の更新を拒否することは、一般に「雇止め(やといどめ)」といわれ、その有効性が問題となります。
従来から裁判例は雇止めが無効になる場合があることを認めてきました。そして、このような裁判例の傾向をより明確にするため、2012年の法改正で雇止めの禁止に関する規定が新たに設けられました。改正後の労働契約法19条は、次の場合に雇止めは認められず、労働契約は更新されたものとする旨を定めています。

  1. 有期契約が反復して更新されており実質的に期間の定めのない雇用契約と同視できるか、あるいは、労働者が契約更新を期待する合理的な理由があること
  2. 労働者が契約更新の申込みをしたか、あるいは、期間満了後遅滞なくその契約更新の申込みをしたこと
  3. 使用者が労働者の契約更新の申込み拒否する合理的な理由がないこと

つまり労働者が通常契約が更新されるだろうと期待するのがもっともな労働契約である場合には、使用者の裁量で自由に雇止めにすることができないのです。たとえ1か月の解雇予告手当を支払ったとしても使用者の裁量で契約を終了させることはできません。
また、厚生労働省の定める「契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」には、①契約を3回以上更新した場合、または、②雇入れの日から起算して1年を超えて継続勤務している場合、使用者は30日前に労働者に雇用契約を更新しないことを予告しなければならないと定めています。また、この場合、労働者から請求があると使用者は更新しない理由について証明書を交付しなければならないと定められています。この基準も雇止めの有効性を判断する際の参考になります。
ご相談の件だと、Aさんは何回か契約を更新し、1年を超えて継続勤務しているので、Aさんが契約更新を期待する合理的な理由があると認められそうです。そうなるとAさんの勤務態度にどの程度の問題があるのかが重要になり、客観的な証明が難しい事柄だと裁判になった場合に雇止めが無効とされてしまう可能性が高くなります。
もしAさんの雇止めが無効になると、Aさんとの労働契約は更新されたことになり、会社はAさんに給料を支払い続けなければならなく可能性があります(会社の方からAさんが出勤することを拒否する場合、Aさんは働かなくても給料の請求ができます)。
以上から雇止めは慎重に行う必要があり、Aさんとよく話し合って合意に基づいて解決するのが望ましいでしょう。

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