内定取消とは、新規採用する予定で内定を出した高校・大学卒業予定者に対して、企業が一方的にそれを取り消すことを言います。現在の深刻な経済情勢の下、多くの学生が内定を取り消され社会問題化しています。平成21年1月23日現在1,215人(高校生206人、大学生等1,006人)の内定取消が確認(厚生労働者発表)
内定者は多くの場合、採用試験を経て内定通知書を交付され、誓約書などの書面で雇用契約を交わします。つまり「始期付解約権留保付雇用契約」が成立しています。「始期付」とは将来の就労日(勤務開始日)の定めがあるという意味で、「解雇権留保付」とは、例えば卒業できなかった場合、健康状態が著しく悪化して就労に堪えられなくなった場合や違法行為を犯して逮捕された場合等内定取消事由として客観的に合理的な理由があり社会通念上相当と認められる場合であれば、会社に解雇権が留保されていることを言います。
しかし、最近の経済事情の悪化という企業側の事情による「内定取消」は適法性に疑義があるとされています。留保付きではありますが雇用契約が結ばれていることになり、内定を取り消された学生が裁判に訴えたら、企業の側は解雇権の乱用がないことを立証しなければなりません。内定取消が有効かどうかの判断は整理解雇の4要件(1.人員削減の必要性、2.解雇回避努力、3.被解雇者選定の相当性、4.労働者側との協議の手続)に準じる判断基準が適用され、4要素を総合的に考慮して判断がなされる可能性があります。その場合、採用内定時に業績悪化が予想できなかったのかという点に加え、役員報酬のカット、中途採用中止、残業規制、賞与削減等企業がどれだけ内定取消を回避するための努力をしたかが問われることになります。
このような努力をすることなく、内定取消をすることは原則的には許されないでしょう。
実務としては、内定者と面談して誠意をもって十分に事情を説明し、内定取消に同意してもらうよう最大限の努力をすべきです。法律的には、従業員の地位確認または賃金支払本訴や仮処分の訴訟を提起される可能性があります。さらに損害賠償請求を求められることもあるでしょう。