今回は、交渉がなかなかまとまらない場合の対処策について述べます。
「元従業員」が再就職の困難さからあくまでも解雇無効・従業員の地位があることを主張してきた場合、交渉は決裂することになります。会社側は、組合に対し、妥結の見込がないことを宣言して、それ以上の交渉をすることを拒絶することができます。
しかし、「元従業員」との紛争は解決したわけではありませんから、会社は、雇用関係において、不安定な状態におかれています。そこで、できるだけ短期に紛争解決する手段として、会社側にとっても有効な対処策は、労働審判の申立てです。労働審判制度については、別の機会に詳しくお話ししますが、3か月から4か月くらいの短期での解決が可能です。原則3回以内の期日で集中審理をして、調停の成立を目指して、迅速に処理されるからです。
労働審判といっても、審判を下されることにあるというよりも、3回の期日は双方の意見・主張と証拠を審理した上での調停を成立させることに主眼があります。当事者(組合を含む)双方の交渉だけで成立しなかった交渉が、労働審判委員会が解雇は有効と考えたとしても、「合意解約し、会社は従業員に対して、解決金〇〇〇万円を支払う」という調停案を提示することで、当事者双方に民事訴訟に移行した場合の見通しが立ち、紛争解決への気運が高まることになります。
この点、団体交渉で金銭的解決が行き詰まった場合も同様に労働審判を申し立てることで、妥当な解決金額が模索できます。