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機関紙 KAWA-RA版 労務管理や社会保険に関する話題の情報を、タイムリーにお届けする当事務所オリジナルの機関紙です。

第51号 平成23年5月1日

災害時の労務管理Q&A 2011

平成23年3月11日に発生いたしました東日本大震災により被災された皆様に心よりお見舞い申し上げます。
被災された皆様が安らぎを取り戻され、被災地が一日も早く復興されることを、社員一同心よりお祈り申し上げます。
今、日本は大変な状況にあります。しかしながらこのような時にこそ、ひとりひとりの力を信じて、明るい未来を思い描いていきましょう。
私どもはこれからも人事労務分野でのアウトソーシングおよび労務相談業務を通じ、お客様を全力でお守りしていく所存でございます。
代表社員 菅原 由紀

震災を理由とした労働者の欠勤に対する給与の支払い
Q.1 震災を理由に欠勤を続ける労働者がいます。欠勤をしていても給与は支払わなければなりませんか?
A.1 震災が原因で労働者が欠勤する場合は、就業規則や個別雇用契約書において、「欠勤しても賃金控除は行わない」旨の定めがある場合を除き、給与を支払う義務はありません。
震災を理由とした労働者の年次有給休暇の申請
Q.2 東京在住で本人は直接被災をしていないのですが、原発の影響を恐れて出社をしない労働者がいます。この労働者から年次有給休暇を取得したいとの申し出がありました。会社はこれを拒否することはできるのでしょうか?
A.2 年次有給休暇(以下「年休」)は労働者から事前に申請があっても、事業の正常な運営を妨げる場合に限り、会社は年休の取得時季を変更することができます。(時季変更権)
しかし基本的には、会社がこの時季変更権を行使することは難しいのが現状です。
また、年休の取得理由については労働者の自由の委ねられているため(年休自由利用の原則)会社は取得理由によって年休を拒否することはできないと考えます。
震災を理由に欠勤する労働者に対する懲戒処分
Q.3 東京在住で本人は直接被災をしていないのですが、原発の影響を恐れて欠勤を続ける労働者がいます。この労働者を懲戒処分にすることはできるのでしょうか?
A.3 労働契約は、労働者が労働を提供し、使用者がその報酬(賃金)を与えることをその主たる内容としています。
震災が原因で労働者が欠勤するということは、原則的には労働者は労働提供義務を履行しないこと(履行不能)を意味します。しかし、震災は不可抗力であり労働者に過失はありません。そこで、労働者に労働契約上の債務不履行責任を問うて、懲戒処分をすることは、客観的に合理的な理由を欠き、または社会通念上相当ではないと考えます。
一方、無断欠勤や正当な理由がない欠勤は、企業秩序を乱す行為であることから、懲戒事由に該当します。しかし無断欠勤や正当な理由がない欠勤を繰り返したとしても、それだけでは懲戒処分として最も重い懲戒解雇の事由には該当しないと考えます。
懲戒の適用は、個別事情のよって判断されるべきものですが、譴責や減給処分であれば懲戒の有効性が認められると思われます。
震災を理由に欠勤する労働者に対する解雇
Q.4 東京在住で本人は直接被災をしていないのですが、原発の影響を恐れて欠勤を続ける労働者がいます。この労働者を解雇することはできるのでしょうか?
A.4 A.3でご説明した通り、無断欠勤や正当な理由がない欠勤は、企業秩序を乱す行為と言えます。従って職場放棄とみなして解雇することもやむを得ないと思われます。
労働基準法第20条(解雇の予告)のただし書き「労働者の責に帰すべき事由」の判断基準として、通達では「原則として2週間以上正当な理由なく無断欠勤し、出勤の催促に応じない場合」「出勤不良又は出勤常ならず、数回にわたって注意を受けても改めない場合」をあげています。
従って、年次有給休暇を消化して、さらに2週間以上無断欠勤又は正当な理由のない欠勤が続く状態であれば、解雇事由としての妥当性が高いと考えます。
ただし、解雇によりトラブルになった場合、会社は解雇を行ったことの合理性、相当性を立証しなければなりません。
実務上では、根気よく出社を促しそれでもなお欠勤を続けるようであれば、退職届を提出させる努力をすることが適切かと思われます。
震災を理由とした解雇
Q.5 採震災の影響により会社の業績が悪くなり、一部の労働者を解雇しなければならなくなりました。会社が労働者を正当に解雇するための要件はありますか?
A.5 質問の解雇は、震災による直接的な被害を受けたため、事業の継続が困難である等の、やむを得ない理由によるものとまでは言えません。従ってこの場合は、整理解雇(人員削減のための解雇)のひとつと考えられます。
整理解雇については、1人員削減の必要性、2人員削減の手法として整理解雇を選択することの必要性、3被解雇者の選定の妥当性、4手段の妥当性の整理解雇4要件を満たしているかを検討し、総合的にその有効性が判断されます。震災を理由とする解雇であっても、上記の4要件を満たしているか十分に検討の上、実施すべきと考えます。

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