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第56号 平成24年3月1日

転勤に関する問題と留意点

『転籍・出向の実務』についての最新の記事があります。

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(転籍・出向の実務)

会社は必要に応じて従業員の配置転換や転勤命令を行います。
一般に、同一の勤務地内で所属部署が変更することを「配置転換」、勤務地が変更されることを「転勤」といいます。
しかし、会社がこれらの「配置転換」や「転勤命令」を無制限に行うことは許されません。
今回は特に「転勤」に関する問題と留意点について解説いたします。

1.転勤を命じられないケース・命じられるケース

採用時に「勤務地は東京本社とし、転勤はなし」などの雇用契約を締結し、就業場所を一定の勤務地に限定をしている(勤務地限定特約有り)場合、会社が他の就労場所への転勤を命ずる場合には、労働者の同意が必要であり、この同意を得ずに一方的に転勤を命じることはできません。

しかし、雇用契約時に勤務地を限定する特約がなく、就業規則等に「会社は、業務上必要な場合は転勤を命じることができる」と規定されていれば、転勤命令についての包括的合意(雇用契約時に将来に転勤命令があった場合には、その指示に従うという合意)があったものとされ、原則として労働者は転勤命令を拒否することはできません。

従って、勤務地を限定する特約がなく、就業規則等に転勤を命じる根拠があるにもかかわらず、転勤命令を拒否した場合は懲戒処分の対象となり、場合によっては転勤を拒否した労働者を解雇することも可能です。

2.転勤命令が「権利の濫用」になる場合・ならない場合

しかしながら、転勤命令についての包括的合意があるとしても、次のような場合には、会社側の「権利の濫用」として転勤命令が無効になる場合がありますので注意が必要です。

1. 転勤命令に業務上の必要性がない場合

転勤命令に業務上の必要性がない場合は「権利の濫用」となり、転勤命令は無効です。

ただし、裁判例では、企業経営上合理的な必要性があればよく、また人選についても「どうしてもその人でなければいけない。」というような高度な必要性までは求められてはおらず、業務上必要かどうかの判断について、会社側の裁量が広く認められています。

2. 不当な目的・動機で転勤を命じる場合

不当な目的・動機がある場合とは、具体的な例として、労働者を退職に追い込むためや日頃会社に対して批判的な労働者に対する嫌がらせとして転勤命令を行う場合であり、これは「権利の濫用」となります。

3. 労働者に著しい不利益を負わせる場合

例えば「転勤により新婚早々別居生活になる場合」、「転勤により通勤時間が長くなり子供を保育園に連れて行く時間がなくなる場合」、「転勤により妻子を残して単身赴任となる場合」などのケースで裁判所は、労働者に著しい不利益を負わせるとまでは言えないとし、転勤命令は有効と判断しています。

一方、裁判例の動向からすると、特に家族が健康上の問題を抱えている場合や、家族の介護が必要な場合の転勤については、通常労働者が甘受すべき範囲を超えたものとして権利の濫用に該当すると判断される可能性が高いようです。従って会社は慎重に対応すべきと思われます。

3.実務上の対応

以上のように、勤務地限定特約がなく、就業規則に根拠規定があり、権利の濫用にあたらない場合では、会社側の一方的な判断で転勤を命じることは可能です。

しかし実務上は、会社は転勤を命じる場合の人選を慎重に行い、労働者の意向や家庭の事情等にもできるだけ配慮する姿勢を示すことが、労務管理上必要だと考えます。

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