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機関紙 KAWA-RA版 労務管理や社会保険に関する話題の情報を、タイムリーにお届けする当事務所オリジナルの機関紙です。

第70号 平成26年7月1日

定額残業代制の適正な制度設計と運用

『定額残業代』についての最新の記事があります。

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(定額残業代、固定残業代の表示方法について)

定額残業代制とは、月額の給与にあらかじめ残業代相当額を固定額として支給するものです。「みなし残業制」「固定残業制」などといわれることもあります。
原則として残業代は、実際に行った残業時間に対して割増率を乗じ計算して支給するものです。
それでは、そもそも残業代を毎月固定的に支給することは問題ないでしょうか?
残業代を定額で支払うことは、以下の要件を満たしていれば、合理的な手当として認められます。逆に言えば、要件を適切に満たしていない「定額残業手当」は残業代相当額として支払っているものとは認められず、他の手当と同様に、単に毎月固定的な手当を支払っているものとして扱われるため注意が必要です。

定額残業手当の要件
  1. 就業規則又は給与規程に「定額残業手当」を残業代相当額として支給する旨の記載があること。
    この場合の手当の名称は任意のため、「業務手当」「職務手当」「営業手当」等どのような名称でも構いませんが、この手当が残業代として支払われるものであり、何時間分の残業代相当かということを明示することが必要です。
  2. 労働条件通知書もしくは雇用契約書等において、定額残業手当が支給される本人に周知すること。
  3. 定額残業手当を超過する実残業が発生した場合には、差額を支給すること。
    従って、定額残業手当の仕組みを導入していても、実残業時間が定額残業手当で支給している残業時間を超過しているか否か毎月検証することが必要となります。
    そして、超過している場合には、超過分について別途支給することが必要です。
定額残業制へ変更する際の注意点

基本給等の額に残業代を含めて設定しているつもりの事業所が、上記の要件を満たすために定額残業制を導入する場合は、元の基本給等から定額残業代を逆算し、定額残業代を差し引いた額が新たな基本給になります。これは従来の基本給額の引き下げになるため労働条件の不利益変更にならないように注意する必要があります。

なお、定額残業制導入のポイントと定額残業相当額の計算式は次の通りです。

  • 変更前・・・基本給:300,000円 
    時間外勤務45時間程度を含んで支給しているつもり。
    就業規則又は給与規程、労働条件通知書・雇用契約書等に記載なし。
  • 変更後・・・時間外勤務45時間程度を「定額残業手当」として支給
    (例) 月平均所定労働時間:168時間
    300,000÷(168時間+45時間×1.25)=1337.79円
    割増賃金の単価=1337.79円×1.25=1,672円
    定額残業手当=1,672円×45時間=75,240円
    基本給=300,000円-75,240円=224.760円
    就業規則又は給与規程に記載。
    個別に変更後の給与を書面で提示の上説明し、書面での合意をとる。
給与明細書への記載

平成24年3月8日に定額残業手当に関する最高裁判決が出て、その中の裁判官の補足意見では給与明細書に「定額残業手当の金額とそれに対応する時間数」を明示することを求めています。この補足意見に法的効力はないようですが、その後の判例でも給与明細書に言及しており、今後実務上では、大きな影響を与えることになると思います。

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