団体定期保険(全員加入のAグループ保険・旧商品)とは、会社が保険契約者となり、従業員全員を一括して被保険者とし、保険料を全額負担し、従業員死亡など契約所定の事由が生じた場合には保険金を受け取るという保険です。
自社従業員の死亡により会社が高額の死亡保険金を取得しておきながら、社内規定どおり、(死亡退職金や弔慰金として)そのごく一部に相当する金銭しか遺族に支払っていなかった事案が明らかにされ、会社の不正利得があるとして、平成7年ころから遺族による差額の支払請求訴訟が相次ぎました。
もともと保険契約者(会社)と被保険者(従業員)との間に「明示の合意」はないにもかかわらず、会社が保険金を独占することが労使関係としては不公正です。そういう価値判断から、いくつかの下級審は、遺族の保険金引渡請求を認めようとしました。しかし、その金額を認める一定の基準があるわけではありません。
最高裁(平成18年4月11日)は、次のような構成で原告の保険金引渡請求を棄却しました。①保険契約自体は有効(被保険者の一括同意がある)で、②保険金と支払われた死亡退職金や弔慰金との差額があっても、直ちに公序良俗違反とは言えない。③会社が受領した保険金の全部又は一部を遺族に支払うことを明示的または黙示的に合意していたとは言えない。
なお、平成8年11月、生命保険業界では、全員加入の団体定期保険は、被保険者の遺族を保険金受取人とする主契約部分(総合福祉団体定期保険)と保険契約者が保険金受取人となる特約部分(ヒューマン・ヴァリュー特約)とに分けて、①特約部分の保険金を主契約の保険金以下とし、かつ②2000万円とすること、③特約の保険金請求には遺族の了知を受けてすること等のトラブル回避策を盛り込んだ商品改定をしました。