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機関紙 KAWA-RA版 労務管理や社会保険に関する話題の情報を、タイムリーにお届けする当事務所オリジナルの機関紙です。

第82号 平成28年7月1日

寺崎弁護士の法律の窓

「中間管理職の上司とうまくいっていなかった部下が、その上司が取引先からキックバック(リベート)をもらっていたことを社内メールやSNSで内部告発しました。SNSについては、会社名は匿名化されており、誰にでも分かるというわけではないのですが、業界ではある程度特定できるものでした。たしかに当該管理職がリベートをもらっていたことは調査の結果明らかになりましたが、一方、会社は内部告発行為で取引先に対する名誉・信用を毀損されました。会社として、この従業員に対して何らかのペナルティを課すことができるでしょうか。」

まず、従業員が職場外において企業批判行為をした場合、当該行為が労働契約上の誠実義務違反になるでしょうか。つまり、労働者は使用者の利益を不当に侵害してはならない義務に違反するかどうかです。この点、告発内容が真実であり、ないし真実と信ずべき相当な理由があるか否か、告発の目的が公益性を有するか否か、告発内容の当該組織にとっての重要性、告発手段・方法の相当性等を総合考慮して、当該内部告発が正当と認められた場合には、仮に当該組織の名誉・信用が毀損されたとしても懲戒処分を行うことはできないとした裁判例があります(大阪いずみ市民生協事件)。

本件では、告発内容が真実であること、当該組織における重要性は認められるでしょう。 告発目的の公益性については、従業員の主観的動機(仮に腹いせ目的であったとしても)というよりも告発することで得られる客観的利益を考えるべきでしょう。また、SNSで外部に発信した点は、手段・方法の相当性に関わるものですが、情報の拡散の現状など一概に判断しにくいと思います。諸要件を「総合考慮」するということは、このようにケースバイケースの積み重ねによる判断になります。

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