長時間労働は疲労の蓄積をもたらし、さらに脳・心臓疾患との関連性が深いことは医学的にも認められていることです。健康障害を発症する1ヵ月前または6ヵ月に渡り、1ヵ月当たり45時間以内の時間外労働と健康障害との関連性は弱いことが指摘されています。
しかし、45時間を超えて時間外労働が長くなるほど、健康障害発症のリスクが徐々に高まっていくとされています。そして、「発症前1ヵ月に100時間を超える時間外労働、または発症前2ヵ月から6ヵ月(いずれかの月)に80時間を超える時間外労働」をしたことが認められる場合、業務と健康障害発症との関連性が強いと判断されることが示されています。
企業は長時間労働それ自体労働者の強い負荷をかけるだけではなく、労働者の休養時間や睡眠時間を減らし、疲労の蓄積を進めるものだということを認識する必要があります。
安全配慮義務とは、「労務の提供にあたって、労働者の生命・身体を危険から保護して使用するように配慮する義務」をいい、労働契約を締結すれば、契約に付随して当然に発生する使用者の義務です。
企業が労働者の長時間労働に対して十分な措置を講じなった結果、その労働者の健康障害が生じた場合には、企業は不法行為または安全配慮義務違反に基づく損害賠償を請求される可能性があります。
過重労働による健康障害防止のためには、時間外・休日労働時間の削減、年次有給休暇の取得促進等のほか、事業場における健康管理体制の整備、健康診断の実施等の労働者の健康管理に係る措置の徹底が重要です。また、やむを得ず長時間にわたる時間外・休日労働を行わせた労働者に対しては、面接指導等を実施し、適切な事後措置を講じるようにしましょう。
※ 終業時刻から次の始業時刻までの間隔(インターバル)の最短時間を規制することで勤務終了後から次の勤務開始までに一定の間隔(インターバル)を設け、休息時間を確保する制度
若い新入社員であっても、他の労働者と異なる基準で安全配慮義務違反の判断がされるわけではありませんが、昨今若い新入社員が入社数ヵ月で精神疾患を発症するケースが見受けられるため、新入社員への健康管理についてもご案内いたします。
まずは研修期間を十分取って、社会人としての心構えを身につけてもらうことが必要になります。また一昔前流行したような威圧的な新人研修は、精神疾患発症の原因になることもあり、病気になれば労災になる可能性が高いと考えられます。
若い社員の労働時間管理は、上長が責任をもって行いましょう。会社が残業を命じて過重労働になるばかりではなく、本人が頑張り過ぎて長時間働き、倒れてしまうケースもあります。この場合も管理不足で会社の責任が問われます。
また、若い社員を不用意に怒鳴ったり、机を叩いたりたりすると、うつ病等の精神疾患を引き起こすこともあります。叱り方に配慮することが必要です。
メンタルヘルス対策で大切なことは、身元保証人をつけることです。精神面で体調を崩したとき身元保証人(多くの場合は親)と協力して対応することが好ましいでしょう。
新入社員のメンタル不全の原因の大部分は、雇用のミスマッチによって起きる職場不適応です。採用面接時には持病の申告を求め、入社希望者の健康状態を確認することが大事です。なお、入社後は健康診断を確実に実施して下さい。